ヤクルト、リーグ三連覇に暗雲 「マクガフ退団」「奥川低迷」で“絶対大丈夫”と言えない理由

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“最大の不安要素”は令和初の三冠王

 奥川は、高校3年春の選抜後には右肩を痛めてしばらく実戦から遠ざかっており、プロ入り前のメディカルチェックで右肘の炎症が見つかっている。その年のキャンプでは、ノースローでのスタートとなるなど、過去にも度々故障は報じられている。復帰に向けて、現在は捕手を立たせての投球を行っているとはいえ、これだけ長期離脱をした経験は初めてで、来季に復調できるかは不透明だと言わざるを得ない状況だ。

 チーム状況をみても、奥川以外の若手投手陣は、二軍でそれほど目立つ活躍をしている選手は見当たらない。今年のドラフト会議で、社会人ナンバーワンの呼び声高い吉村貢司郎(東芝)を獲得できた点はプラス材料ではあるが、主力はベテランが多く、今年以上に、投手陣は苦しい台所事情に追い込まれる可能性は否定できないだろう。

 そして、将来的な“最大の不安要素”と言えるのが、主砲・村上宗隆のメジャー移籍だ。今年は令和初の三冠王、日本人選手最多記録となるシーズン56本塁打と、まさに「村神様」と呼べる大活躍だったが、シーズン後の会見では「できるだけ早くメジャーに行きたい」とはっきり表明している。

メジャー移籍は想定内だが……

 具体的な時期としては、これまでの選手を見ると、国内FA権を取得する1年前にポスティングシステムで移籍というケースが多く、そうなると「2025年オフ」となる。ただ、選手会からはFA権取得期間の短縮を求める要望も出ており、今後の動向ではメジャー移籍が早まることも十分に考えられるだろう。

 もちろん、球団サイドは、村上の数年後の移籍は想定しているようで、今年のドラフト会議では、2位で西村瑠伊斗(京都外大西)、3位で沢井廉(中京大)という強打者を指名している。しかし、これだけの選手の穴は簡単に埋まるものではないことは、主力打者だった鈴木誠也が抜けた後の広島を見てもよく分かるだけに、ヤクルトにとって、頭が痛い問題であることは間違いない。

 過去2年間も戦力的には他球団を圧倒したわけではなく、高津臣吾監督をはじめ首脳陣の手腕が光ったリーグ連覇だったが、来年以降も結果を残すことができるのか。高津監督はチームを鼓舞するために「絶対大丈夫」という言葉を使っていたが、果たして……。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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