ヤクルト、リーグ三連覇に暗雲 「マクガフ退団」「奥川低迷」で“絶対大丈夫”と言えない理由
苦境に立たされるリリーフ陣
日本シリーズでは惜しくもオリックスに敗れたものの、セ・リーグ連覇を達成したヤクルト。“黄金期”を迎えたチームに衝撃のニュースが入ってきた。クローザーのマクガフがメジャー復帰を目指して、今季限りで退団することが報じられたのだ。【西尾典文/野球ライター】
2019年に来日したマクガフは、5年間で236試合に登板しており、昨年と今年は30セーブ以上をマークするなど、リリーフ陣の中心的存在だった。ヤクルトは、セ・リーグ連覇を達成しているものの、2年連続で二桁勝利をマークした投手は0で、先発防御率3.84はリーグ最下位である。それでも、チームが勝利を積み重ねていたのは、リリーフ陣が奮闘していた証拠だ。そこから、守護神のマクガフが抜ければ、リリーフ陣が苦境に立たされる可能性は否定できない。
ヤクルト投手陣の“不安要素”は、マクガフの退団だけではない。特に大きな誤算と言えるのが、エース候補と見られていた奥川恭伸の低迷だ。2年目の昨年は18試合に先発して9勝をマーク。リーグ優勝と日本一に大きく貢献したが、今年は3月に1試合先発しただけで戦線を離脱。結局、二軍でも登板がないままシーズンを終えたのだ。
「手術を決断するなら早い方が良い」
他球団の編成担当は、奥川の状態を芳しくないと見ているようだ。
「けがで離脱してからは二軍での試合でも実戦はおろか、ブルペンで投球する姿すら見ることがありませんでした。それだけ肘の状態が悪かったみたいですね。本人は以前も痛めた経験があるそうで、また、しばらく休めば投げられると考えていたようですが、一向に状態は上がってきませんでした。最近はトミー・ジョン手術を受ける選手が多いですが、本人がそれを望んでいないという話も聞きます。ただ、このまま春になっても状態が戻ってこないようであれば、かなりの時間を無駄にしたことになり、来年の途中になって手術となれば、再来年も投げることはできません。手術を決断するなら早い方が良いという声もあるようです」(他球団の編成担当者)
一方、高校時代から奥川をチェックしている、他球団の北信越担当スカウトは以下のように分析している。
「高校時代からとにかくステップの幅が短く、本人もそのことは気にしていたようです。それでも下級生の頃から活躍して、3年生の時には150キロ以上のボールをバンバン投げていた。凄いことではありますが、それだけ上半身や肘への負担が大きかったのではないでしょうか。『では、フォームを変えれば良いのでは』と簡単に言いますが、結果が出ているうちにフォームを変えることは勇気がいるんですね。それで崩れてしまったら元も子もありません。指導者側も気を遣う部分です。高校の時点での完成度は、奥川がナンバーワンだったんですが、同学年の宮城大弥(オリックス)や佐々木朗希(ロッテ)がどんどん活躍していて、その焦りもあったのかもしれませんね」
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