人口増加、大気汚染、深刻な人権問題…台頭するインドは中国の二の舞になるか
世界銀行は12月6日、今年度のインドの経済成長率を6.5%から6.9%に引き上げた。インド政府も11月末、6.8~7.0%になるとの見通しを示している。
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他国と同様に商品価格の上昇や各国の中央銀行による 引き締め圧力を受けているが、世界銀行は「世界的な景気減速がインドに与える影響は他の新興国に比べてはるかに小さい」と判断した。
新興国の債務危機が懸念され始めているが、「インドの債務の持続可能性は現段階では問題はない」と世界銀行はみている。
インドの今年第3四半期の経済成長率は前年比6.3%増となった。第2四半期の13.5%増加から減速したものの、8四半期連続のプラス成長を記録している。
足元の新型コロナの1日当たりの新規感染者数は数百人程度で推移しており、今後も成長が続く見通しだ。
世界経済の成長エンジンが減速する中、インドは一人気を吐いている感が強い。
国際通貨基金(IMF)によれば、インドの名目GDPは今年、旧宗主国の英国を超え、世界第5位に浮上する。2025年にドイツを上回り、2027年には日本も抜いて米中に次ぐ世界第3位の経済大国になると予測されている。
人口増加に対応できない都市
インド経済が順調に拡大を続けられるのは、人口増加が続くと見込まれているからだ。
国連の推計では、インドの人口は来年、中国を抜き、世界第1位となる。インドの人口はその後も増加を続け、ピークを迎える2060年代には17億人に達するという。
英ガーディアンによれば、インドの1日当たりの出生数は約8万6000人、中国の1日当たりの出生数より7割以上多い。 年齢の中央値は約29% と非常に若く、インドでは若者が溢れていると言っても過言ではない。高齢化が進む日本から見れば、うらやましい限りだが、深刻な問題も浮上している。
インドは今後数十年間、都市人口が爆発的に増加すると予想されているが、既に各地の大都市は人口増加に対応できなくなっている。
インド最大級の都市ムンバイの人口は過去30年間で約800万人増加し、2000万人に達しているが、2035年までにさらに700万人増加するとされている。
ムンバイでは国内の他の大都市と同様、上下水道や廃棄物処理などのインフラが人口の増加ペースに追いつかず、住民の4割がスラムに住んでいるという悲惨な状況だ。
年々深刻化する大気汚染の問題も頭が痛い。
英医学誌ランセットによれば、首都ニューデリーでは2019年に大気汚染に起因する死者数が1万7500人に上ったという。
インドの人口爆発が地球環境に悪影響をもたらすとの懸念も生じている。
国際エネルギー機関(IEA)は「インドの都市人口は2040年までに2億7000万人増加し、それに伴い二酸化炭素排出量が大幅に増加する」と警鐘を鳴らしている。
このように、インドの人口増加は手放しで喜べない状況になりつつあるが、なぜ増加のペースを抑制することができないのだろうか。
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