シオノギ製コロナ治療薬の効き目は? 専門家は「ゾコーバの承認で何とか間に合った」
〈痛くなったらすぐセデス〉のCMで知られる塩野義製薬が、国産初の新型コロナ感染症治療薬を世に送り出す。同社の新薬「ゾコーバ」が、11月22日に厚労省の承認を取得したのだ。
【写真を見る】国内の製薬会社の製品として初めてのコロナ治療薬だ
厚労省担当の記者が解説する。
「ゾコーバは、軽症・中等症向けの抗ウイルス薬としては3番目の承認となります。その仕組みはコロナウイルスが体内で増えるための酵素を阻害し、結果、ウイルスの増殖が抑えられるというもの。国の緊急承認制度を使って6月と7月にも審議されましたが、その時は有効性があいまいという理由で見送られた。そこで、塩野義は追加の治験結果(約1800人)を提出し、今回承認にこぎ着けたわけです」
感染症対策はワクチンと治療薬の両輪がそろうことで、沈静化への道筋がつくといわれる。浜松医療センター感染症管理特別顧問の矢野邦夫医師も言うのだ。
「たとえばワクチンだけの場合、ウイルスの変異によって効かなくなる可能性があります。しかしゾコーバはインフルエンザ治療薬のタミフルと同じように、変異ウイルスにも対応できる。しかも、服用によって体内のウイルス量が大幅に減る(治験では30分の1)ため、問題になっている家庭内感染も減少するとみられています。日本では第8波が始まったばかりですが、今年の冬はインフルエンザの流行も予想されている。ゾコーバの承認で何とか間に合ったというのが正直な感想です」
政府が100万人分を購入
医療現場ではすでに使われ始めているが、治験では、服用後7日前後で発熱や喉の痛み、倦怠感などの改善が確認されている。
もちろんドラッグストアで買えるわけではない。塩野義製薬によると、
「ゾコーバは飲み薬で、処方は医師が行い、1日1錠を服用します」(広報部の担当者)
気になる値段だが、同社は公表していない。
「ご参考までに、同じく軽症・中等症向けであるMSDのモルヌピラビルは、1患者あたり約9万円です」(同)
もっとも、日本政府がすでに100万人分を購入しており、薬代は公費負担なのでタダ。
とりあえず懐具合の心配は無用だ。