優勝したのに“クビ”に…わずか1年で解任された「悲運の監督列伝」

スポーツ 野球

  • ブックマーク

電撃解任が呼んだ波紋

 3年契約の1年目で解任されたのが、05年、楽天の初代指揮官になった田尾安志監督である。

 50年ぶりの新球団としてゼロからスタートしたチームは、岩隈久志、礒部公一らが加入したものの、戦力不足は否めず、38勝97敗1分のダントツ最下位でシーズンを終えた。

 この結果は、開幕前から予想されており、田尾監督も「今季は勝った負けたで判断されるわけがないと思っていた」という。だが、球団側はシーズン終了まで2試合を残した9月25日、「来季の指揮は依頼しない」と事実上の解任を通告する。

 地元ファンの絶大な支持を集める人気監督の電撃解任に、仙台出身のシンガーソングライター・さとう宗幸氏は「1年で手腕を評価していいのか。まったく解せない」と批判し、仙台市内でファンが「解任反対」の署名活動を行うなど、大きな波紋を呼び起こした。

 しかし、球団側が解任理由に挙げたのは、成績不振ではなかった。

 島田亨球団社長は「仮に田尾さん以外の人が監督をしていても、同じような結果しか出せなかったと思います」としながらも、「田尾さんの目指している野球がどんなもので、それに向けてどう動いているのか、については僕ら社員もファンも今ひとつ分かっていなかった」(「田尾監督解任の真の理由」日経BP社)と中長期的ビジョンが見えなかったことを挙げている。

 これに対し、田尾監督は「お金を出してもできないくらいの素晴らしい経験をさせてもらった」とゼロから球団を立ち上げる機会を与えられたことに感謝してチームを去った。

 その後も楽天は、球団創設から16年で計5人の監督が1年で退団するというプロ野球界では珍しい“交代劇”が繰り返されている。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2021」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。