私の家に電気が来たのは3時間だけ。日本のカイロはありがたい…キーウ在住「ボグダンさん」が語るウクライナの現在

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今年はどうなる?

――今年は例年のような年末年始は難しいだろうか。

ボグダン:そうですね。ウクライナ国民も悩んでいると思います。クリスマスツリーを買うか、買わないか。買ったところでライトアップできるのか。街中のツリーだってそうです。それを狙ってロシアがミサイルを撃ち込んでくるかもしれない。市街地には地対空ミサイルが設置されているとはいえ、打ち落とせば残骸も落ちてくるでしょう。年越しパーティーをやるにせよ、全家庭に電力は来るのか。ただでさえ電力不足の今、地域ごとに時間を制限してやるのか。大晦日には友人の家に遊びに行くことも多いのですが、例えばキーウでは夜11時から朝の5時までは外出禁止令が出ているので、朝の5時まで友人宅から出られなくなりますからね。

――外出禁止令はウクライナ全土に出されているのか。

ボグダン:地域によって時間帯は異なりますが、全土に出されていますです。例えば、ウクライナ北東部のハルキウは、これまで夜10時から朝6時くらいまででしたが、2日前からキーウと同じになりました。戦闘が激しくなれば外出禁止時間も長くなります。キーウも三日三晩、外出禁止ということもありました。状況に応じて対応している感じです。

――キーウの人々は10カ月も耐えている。

日本に行ってもいいかも

ボグダン:本当に疲れます。諦めもある。男性は基本的に出国できませんしね。停電が長くなってきたために国外に出る女性も増えています。おじいちゃんおばあちゃんは、どうすることもできないので耐えるしかない。だとしても、ロシアに停戦などはまったく求めていませんが。

――ボグダンさんの仲間にも体調を崩す人が出ているという。

ボグダン:僕自身も夏におじいちゃんと愛犬が亡くなって、生きる力がなくなったこともありました。弟も熱を出して寝込んでいますし、ボランティアを手伝ってくれていたアントンも母親が病気になって精神的に疲れ、休んでもらっています。もう1人の仲間、アンドレ―も、ヘルソンに300トンの支援物資を届けに行って、荷下ろしで背中を痛めてしまいました。3日間バス移動したせいもあったと思います。僕らだけでなく、他のボランティアの方も同じようなものだと思います。

――ボグダンさんはくじけないのだろうか。

ボグダン:冒頭で申し上げたように、昨日、僕の家には3時間しか電気が来なかった。そうすると何もできないんですよ。こんな生活が続くなら、やせ我慢などせず、日本に行って活動するほうがいいのかなと思うこともあります。疲れもあるし、やれることはやっているとも思う。ウクライナにいなくてもできることはあるわけですから。ボランティアのコーディネートだってできるでしょうし、情報発信だって日本からできる。日本にいることで、もっと色々な人と繋がって、色々なところに顔を出して、ウクライナのことを知ってもらうことだってできるんじゃないか。ただ、僕はウクライナもキーウも大好きですし、できる限りここを離れたくないと思っています。

デイリー新潮編集部

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