W杯を中継したABEMA、NHK、テレ朝、フジ 中継していない民放も…実は誰も笑えない現実
NHKの誤算
「『放映権料が高額なため、もし試合が中継できても広告収入で回収できる金額ではない』と説明し、続けて『もし支払えば、皆さんの給料が払えなくなる可能性すらあった』と理解を求めました。確かに350億円をNHK、テレ朝、フジ、TBS、そして弊社の5社で負担したとすれば、1社あたり70億円。全盛期の巨人戦ですら1試合2億円でしたからね。桁が違うと言わざるを得ません」(同・日テレ関係者)
グループリーグで敗退したら、日本戦は3試合しか放送できない、と先に触れたが、もし初戦から2連敗した場合、3試合目は“消化試合”になってしまう。
1、2試合目を放送するのがベストだが、そのために70億円を払うのは“割に合わないギャンブル”だという。
「NHKは11月23日水曜午後10時から初戦のドイツ戦を放送し、世帯35・3%、個人22・1%を記録しました。素晴らしい数字ですが、第2戦で思わぬ“被害”に遭います。テレ朝が27日日曜午後7時からコスタリカ戦を放送し、世帯42・9%、個人30・6%を獲得。裏番組となったNHKの大河ドラマ『鎌倉殿の13人』は、世帯6・2%、個人3・5%と、通常より視聴率が半減してしまいました」(同・日テレ関係者)
テレ朝の“高い買い物”
NHKはドイツ戦で得た“利益”を、大河ドラマの惨敗で吐き出してしまった格好になった。
「こうなると『NHKの経営判断は正しかったのか』という議論が起きてもおかしくありません。国民から受信料を徴収しているので、W杯の高額な放映権料が、その使い道として納得してもらえるのか、疑問の声も上がるでしょう」(同・関係者)
テレ朝は日曜の午後7時という理想的な放送時間だったが、だとしてもやはり“高い買い物”だったようだ。
「世帯視聴率が40%を超えたのですから、大成功だと思われるでしょう。しかし、高額な放映権料は、広告料では回収できません。ご存知の通り、テレ朝は弊社と激しく視聴率を争っています。W杯効果で日テレの単独三冠を阻止できるかもしれませんが、そのために数十億円を出費するのは、やはり割に合わないでしょう」(同・日テレ関係者)
ならばインターネットテレビのABEMAが勝者かと言えば、そうではないという。
「ABEMAも原則、無料放送です。CMなど広告収入はありますが、民放キー局ほどの額ではありません。おまけに放映権料以外にも出費はかさみます。出演者のギャラ、スタッフの渡航費など馬鹿になりません。視聴制限が実施されたことで、有料会員は増えたでしょう。しかしW杯が終わると、遅かれ早かれ有料組は減っていくはずです」(同・日テレ関係者)
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