「W杯」最中に突如トレンド入り 名馬「サリオス」が「香港カップ」を最後に引退声明も無念の出走取り消し「一口馬主」から不満の声噴出
一口馬主
さらに、もう一つ人気の秘密がある。
「サリオスには、たくさんの『馬主』がいるんです。と言っても、『一口馬主』なのですが。馬主は通常、相当の資産や収入がないとなれませんが、一般のファンも、馬主気分を味わいたい。そんなニーズに応じてできたのが、一口馬主制度なんです。クラブ法人が馬の金額をある口数で割り、出資者を募集。その馬がレースで勝てば、口数に応じて賞金を分配するというものです。総額7000万円のサリオスも500口に分割され、一口14万円で売られました」
そう、サリオスは、大金持ちの所有する馬ではなく、庶民競馬ファンの中の「ヒーロー」だったというわけだ。
そんなサリオスが、久々に強さを見せつけ完勝したのが、今年10月に行われた、毎日王冠(GII・芝1800メートル)だった。
「これまでサリオスは、マイル路線(※1600メートル戦のこと)で惜敗が続いていたのですが、1800メートルに延長して勝利したのです。実はこの毎日王冠を勝ったのは、一昨年に続いて2度目。これでファンや一口馬主たちは、『やっぱり距離が合ってなかったんだ』『これからは、1800メートル戦や2000メートル戦を使えばついに覚醒するぞ』など、喜びの声が上がりました」
判断ミス
ところが陣営は、サリオスの次走を、やはりマイル戦のG1「マイルチャンピオンシップ」に定めた。これには再びファンたちは絶望。果たして結果はというと、
「まったくいいところなく、14着と大敗。『だから言わんこっちゃない』『これは判断ミス』などの声が上がりました」
そして、再びマイル戦を使っての、突然の引退発表。これにとうとう、一口馬主やファンの怒りが爆発したという次第。さらに、レースの前日になって、その最後のマイル戦ですら出走取り消しとなったものだから、再びサリオス民の怒りが噴火したというわけだ。
有終の美を飾る予定だったのに
サリオスに出資しているファンの一人も怒りを隠し切れない。
「一口馬主はあくまで出資者であり馬主ではありませんから、次走どうするかとか、引退についても、口出しすることはできません。ですが、今回の判断には納得がいきません。サリオスは元々血統も晩成型で、クラブからのレポートにも、『ようやく馬体が完成してきた』と書いてありました。もちろん、引退して種牡馬になることは嬉しいですが、あのコントレイルと渡り合った馬なんだから、まだまだ活躍できたはず。しかも、最後の走りも拝めないなんて、悲しすぎます。有終の美を飾ってくれると信じていたのに。とにかく、こんな最後は悲しすぎる。具合さえ良ければ、陣営には一旦引退を取り消してもらって、有馬記念で最後の走りを見せてほしい」
競馬関係者が囁く。
「なぜ今のタイミングでの引退かはわかりませんが、いずれにせよ、一口馬主制度の競走馬たちは、管理する調教師や、クラブ法人の判断が最優先となるため、こうしたファンとの間に軋轢が生じることはままあります。個人馬主さんは、勝つために無理やり数多くのレースを使い、故障させてしまうこともありますし、どちらが馬にとっていいのかは最後までわかりませんね」
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