ロシア軍の砲弾不足はかなり深刻 かつての仲間はNATOへ寝返り、経済制裁による影響も

国際

  • ブックマーク

砲弾の使用量

「アメリカ軍の場合ならアフガニスタン、イラクといった国々で、小規模の武装組織と戦ってきました。それに対応するため、軽量化を至上命題とした『M777(155ミリ榴弾砲)』をイギリスの軍事メーカーが開発しました。たとえアフガンの山岳地帯でゲリラ戦が展開されても、軽いのでヘリコプターで運べます。武装組織に向けて榴弾砲を発射し、撃退するという作戦も可能になるわけです」(同・軍事ジャーナリスト)

 ところが今回の戦争では、ウクライナ軍とロシア軍の砲兵隊が対峙する状況になった。これは“第二次世界大戦以来”と言っても過言ではないという。

「大砲による戦闘は基本的に、『相手より大量の砲弾を浴びせる』ことが鉄則です。両軍とも砲弾の使用量は凄まじいものだったでしょう。アメリカ軍もロシア軍も、たちまち砲弾が減少してしまったのは当然だと言えます」(同・軍事ジャーナリスト)

 その結果、オースティン国防長官がロシア軍の、また、CNNがアメリカ軍の砲弾不足を報じているのだ。

ロシアのほうが深刻

 CNNはアメリカが《ここ20年では初めて、紛争に直接介入しない事態を迎えている》ことが大きな影響を与えていると指摘する。

《戦争に備えて兵器弾薬を製造する必要性がなく、戦闘が長引く正規軍同士による組織的な交戦に欠くことができない物資の量的確保も進めていない》

 だが、アメリカ軍とロシア軍の状況を比較すると、やはりロシア軍の砲弾不足のほうがはるかに深刻だという。

「ソ連崩壊前、ロシアと東欧諸国はワルシャワ条約機構で、アメリカと西欧諸国による北大西洋条約機構(NATO)に対峙してきました。東ヨーロッパ全体で軍事を考えていたため、ロシア軍が使う152ミリ榴弾砲は、大砲も砲弾もポーランドやエストニア、チェコスロバキア(現在はチェコ共和国とスロバキア共和国)で製造されていました。ところが現在、これらの国はNATO加盟国です」(同・軍事ジャーナリスト)

 ロシア軍のために砲弾を製造してくれる国がなくなったのなら、国内に砲弾の製造工場を作ればいいようにも思える。しかし、そう簡単にはいかないという。

「砲弾も工業製品の一種。鉄と化学薬品が不可欠で、経済制裁に苦しむロシアにとって簡単には製造できないのかもしれません。たとえ工場を整備し、砲弾の製造を開始したとしても、前線に砲弾が届くまでには、相当の日数が必要です。最前線の砲兵は今、砲弾が欲しいのです。結局、ロシア軍は、ベラルーシや北朝鮮で砲弾を調達していると見られています」(同・軍事ジャーナリスト)

次ページ:韓国も注目

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。