ロシア軍の砲弾不足はかなり深刻 かつての仲間はNATOへ寝返り、経済制裁による影響も
大量の砲弾が消費されているウクライナの戦争では、アメリカとロシアの“我慢比べ”が続いているようだ。まずはロシアから見てみよう。AFP=時事は11月24日、「ロシア軍に『著しい』砲弾不足 米国防長官」の記事を配信した。
***
【写真12枚】「美しすぎる」と話題 米国で拘束されたロシアの女スパイ【プーチンも絶賛】
記事はアメリカのロイド・オースティン国防長官(69)の発言を伝えたものだ。担当記者が言う。
「ロシア軍はミサイルなど精密誘導弾が不足していることは、これまでも報じられてきました。経済制裁でIC(集積回路)が不足し、製造が難しくなっているようです。そして今度はオースティン国防長官が、ロシア軍は普通の砲弾も著しく不足していると発言したのです」
もともとロシア軍は、砲撃重視の作戦が“お家芸”だ。ウクライナ戦争でも特に東部戦線で、砲弾の猛射を浴びせてウクライナ軍を苦しめた時期があった。
「その一方で、ロシア軍は緒戦から、補給が充分に機能していませんでした。最前線に砲弾が届かないことも珍しくなかったようです。オースティン国防長官は、ウクライナ軍がロシア軍の保管倉庫を効果的に攻撃した戦果も大きいとし、ロシア軍の《利用可能な弾薬の残量に若干の問題が生じ始めた》と指摘しました」(同・記者)
だが、アメリカ軍も同じ問題を抱えている。CNN.co.jpは11月19日、「ウクライナ向け兵器の残存量手薄に、製造能力にも問題 米」の記事を配信した。
砲弾不足の理由
《米政府当局者の1人は、一部の兵器システムの備蓄分はウクライナへの約9カ月間に及ぶ軍事支援を受けて、「減少の一途」にあるとの現状を説明》
《ウクライナの提供要請に応える上で残存量に懸念が生じている兵器には、155ミリ榴弾(りゅうだん)砲の弾薬や携行式の地対空ミサイル「スティンガー」が含まれる》
アメリカとロシアは、世界トップクラスの軍事大国だ。大砲の弾が不足しているというのは、にわかには信じがたい。なぜ砲弾が不足しているのか、軍事ジャーナリストに訊いた。
「アメリカやロシアに限らず世界中の軍隊は、平時、武器や弾薬の生産量を落とします。戦時中のようにフル稼働させると、たちまち過剰在庫の山になるからです。砲弾も一定量の在庫を確保したら生産を抑制する。演習などで大砲を撃ったら、使った分の砲弾は生産して補填しますが、その程度にとどめておくのです」
戦術が大きく変わったことも大きい。第二次世界大戦後、大砲が威力を発揮するような戦争は起きなかったという。
[1/3ページ]