「餃子の王将」社長射殺事件 その筋の世界で語られていたこと
山口組系組員犯行説
王将が抱えた負債の経緯を追うと、部落解放同盟の関係者が浮かび上がる。同盟との接点は、既に複数のメディアが記事にしている。
さらに「京阪神、同和問題、拳銃、射殺……」というキーワードを耳にすると、指定暴力団・山口組を思い浮かべる関係者は極めて多かった。
山口組は、1990年代には京都府内の同和地区開発を巡って抗争事件を起こし、2000年代初頭には大阪府内で同和系の大規模な金融事件に関わっていた。
2つの事件では、多数の行方不明者が発生したとも言われている。そのため裏社会や事情通の間では「王将の件も山口組だろう」と見る者は少なくなかった。
中には「あの殺害方法なら、あいつだ」と山口組系列の組員の名を具体的に口にする者までいた。実際、数多くの暴力団員や関係者から事情を聞いていた京都府警の捜査員も、山口組犯行説は何度も耳にしたそうである。
真犯人につながる手がかりは乏しく、捜査は遅々として進んでいないと思われていた。事情通の間ではいつしか、「山口組系組員犯人説」が真実のように受け止められ、事件に対する関心も低下した。
身内関与説
大東氏が射殺された原因が、400億円を超える負債処理にあったとしたら──この観点を突き詰め、「身内関与説」を唱える関係者もいた。
殺害前の大東氏は、前経営陣の尻拭いをさせられていたようなものだ。その過程で大東氏は、創業家の秘密に触れたこともあっただろう。恥部が明るみになることを恐れた旧経営陣の関係者が犯行に関与している──こんなストーリーだ。
王将フードサービスの幹部であれば、大東氏のスケジュールや行動パターンを把握していたはず。早朝から一人で掃除するのが日課だったことも熟知していただろう。言うまでもなく、大東氏は掃除場所で射殺されている。
一方、事件発生から約半年が経過した14年6月、マスコミ各社はバイクに焦点を合わせた記事を掲載した。
◆バイクで逃走の可能性も=「王将」社長射殺から半年-京都府警(時事通信:6月18日)
◆王将事件容疑者はバイクで逃走か 京都府警、手掛かり乏しく(共同通信:同)
◆王将社長射殺 逃走車両か バイク押収 京都府警 防犯カメラ映像酷似(読売新聞:6月19日)
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