サッカー日本代表の快挙で思い出される「スポーツ界最大のジャイアント・キリング」とは

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空中分解一歩手前

「代表選手が異口同音に振り返っていますが、その合宿は相当にタフな内容で、実際の試合の方がどれだけ楽かというレベルだったそうです。加えて、独善的とも言われるエディHDのやり方に反発を覚えた選手が多数出て、代表は空中分解一歩手前のところまで追い込まれていました」(同)

 サッカー日本代表も2006年のドイツ杯では、中田英寿がひとりで練習するシーンが目撃されるなど、極めてチグハグした状態に陥っていたとされる。そういう状況では予選突破など夢のまた夢だったに違いない。

「私はその06年のW杯も現地で取材しましたが、ラグビー日本代表も同様かそれに近い状況だったと思います。それでも南アに勝てたのは月並みな言い方になりますが、運もさることながら、ハングリーさ、開き直りということになるでしょうか」(同)

 迎えた9月19日の南ア戦。巨漢の男たちに何度も突破を許すも、ペナルティを取り、キッカーの五郎丸歩がこれを冷静に沈めていく。

「しつこく日本が食らいつき、点差がなかなか離れず、日本が一時逆転したり、相当格上の南アがなりふり構わずトライではなく確実なペナルティゴールを取りに行ったりと、徐々に南アの焦りが見えるようになりました」(同)

最多失点記録

 試合開始当初は南アの勝利を信じて疑わなかったブライトンの観客もまた、日本の番狂わせの可能性を感じ、日本びいきに傾いていった。

 よく知られるように、日本が3点リードされて迎えた後半40分すぎ。相手ゴール手前5メートルで得たペナルティで日本はスクラムを選択する。

「この時、エディHDは自席から3点のペナルティゴールを狙って同点にするよう無線で指示していたとされていますが、フィールドでは“勝つ”ためにトライを狙いに行ったということになりますね。会場もその心意気やよしということで大いに盛り上がりました」(同)

 イエローカードを出されて南アは1人少ない状態だったが、それ以上に日本の勢いに気圧され、立ち往生を余儀なくされた。

「日本は1995年のW杯でオールブラックスと対戦し、17対145で敗れました。これは大会の最多失点記録として残されていますが、一方で2015年の南ア撃破は記録と言うよりはむしろ人々の記憶に深く刻まれているといえるでしょう」(同)

 ラグビーW杯は来年フランスで開催される。日本によるジャイアント・キリングの再現が期待されるところだ。

デイリー新潮編集部

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