「確かな安心」のある相互扶助の社会をつくる ――永島英器(明治安田生命保険相互会社取締役 代表執行役社長 )【佐藤優の頂上対決】
地域社会を「元気」にする
佐藤 御社は健康増進とともに、地域の課題解決にも積極的に取り組んでおられますね。
永島 2030年に向けて、「MY Mutual Way 2030」という10年計画を立てて実行していますが、「みんなの健活プロジェクト」と「地元の元気プロジェクト」を2大プロジェクトとして位置付け、推進しています。
佐藤 全国に営業所がありますから、地域ごとの課題に細かく対応することができる。
永島 はい。私どもは全国に千を超える営業所があり、そこに約3万6千人の営業職員がいます。
佐藤 営業職員の方々が地域の課題に取り組んでいるのですか。
永島 営業職員は、もともとその街で生まれ育つなどして、地域を愛し、地元に貢献したいという人たちです。ボランティアなどで地域貢献をしていた人たちも多いのですが、これからは会社として、そうした活動をしっかりと後押ししていこうと考えています。
佐藤 実際にどんなことをされているのですか。
永島 全国800以上の自治体と連携協定を結び、道の駅での健康増進イベントやJリーグとの協働で少年サッカー教室の開催などに取り組んでいます。また、がん検診の受診率が低い地域では、住民の方に受診を呼びかけています。
佐藤 行政の手が回らないところにどんどん入っている。
永島 「私の地元応援募金」という寄付の仕組みも作りました。全従業員が思い入れのある地域に寄付する仕組みです。
佐藤 対象は市町村ですか。
永島 自治体や地域の団体ですね。全国の支社・営業所がリストアップしたところから、ゆかりがある団体を選んでもらいます。
佐藤 ふるさと納税ならぬ、ふるさと寄付ですね。
永島 こうして集まった従業員の募金に、会社からの上乗せ拠出金を加えて各地の団体にお届けしています。これまでに全国約1600の自治体や団体に12億円を超える募金をお届けしました。
佐藤 これはいつ始まったのですか。
永島 コロナの感染爆発が始まった2020年からです。あの時、従業員から自分たちも何か役に立ちたいという声が上がったんですね。そこでアメリカのオレゴン州ポートランドにある弊社の子会社、スタンコープ社が行っていた仕組みを取り入れました。
佐藤 アメリカは寄付文化に厚みがありますからね。
永島 地域貢献の活動を推進するにあたり、今年4月からは営業職員の役割を見直しました。呼称もこれまでの「MYライフプランアドバイザー」から「MYリンクコーディネーター」に変更しました。相互扶助の理念で、個と個、個と地域の絆をつないでいくという意味が込められています。つまり地域貢献を営業職員の新たな役割とし、その一部に保険があると位置付けたのです。
佐藤 保険外交員の枠を超えて、もっと大きな役割を果たしていくのですね。
永島 名称変更に伴い、処遇も改善しました。これまでは全体を平均すると固定給7に比例給3の割合で、その比例給部分は月々で変動するものでした。
佐藤 意外に比例給のウエートが低いですね。
永島 昭和の時代には、もっと比例給の割合が高かったんです。それが3割まで下がってきたのですが、それでも月の締め切り間際にお客様と向き合った時、ここで成約となれば来月のお給料が変わるという気持ちが生まれてしまう。でも会社としては短期ではなく長期の目線でお客様とお付き合いしてほしいのです。そこで、月例給は固定化し、比例給だった部分は四半期ごとのボーナスで反映させる形にしました。
[3/4ページ]