ワクチン接種で死亡者数急増は本当か? 専門家が「日本は超過死亡率が最も少ない国のひとつ」と説く理由
メディアや医療関係者が新型コロナ「第8波」とインフルエンザの同時流行への警戒を呼び掛けるなか、ネットを中心に論争を呼んでいるのは、むしろ「超過死亡」の数字である。今年に入り“戦後最多のペース”で増加しているという死亡者と、“沸騰ワード”となった超過死亡をどう読み解くべきか――専門家に聞いた。
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【画像】日本の死亡率の推移とワクチン接種率との相関がひと目でわかる驚きの研究データ
現在、議論の的となっているのが11月25日、厚労省が公表した今年9月の人口動態統計の速報値だ。死亡者の数は12万7040人で、前年同月と比べ1万1334人増加。8月はさらに高い水準で死亡者13万5649人、前年同月比で1万7845人増となった。
今年1月から9月までの死亡者数はすでに115万人を超え、戦後最多となった2021年の143万9856人(確定値)を超える勢いを見せている。なかでも今年2月と8月の死亡者は前年より2万人近く急増。ちょうどワクチンの3回目と4回目の接種時期と重なるため、ネット上では「ワクチンによる死亡」を疑う声が増している状況だ。
そもそも超過死亡とは「例年より増えた死亡者数」を指し、前年と単純に比較した数字を“超過死亡”といっても間違いではないが、本来は精緻な算出法によって導かれる数値という。
東京慈恵会医科大学の浦島充佳教授(分子疫学研究部部長)が話す。
「世界保健機関(WHO)が20年1月から21年12月までの新型コロナ・パンデミックによる超過死亡を発表しましたが、その数は世界で1500万人にものぼります。この数字は新型インフルエンザや香港風邪などよりはるかに多く、今年のオミクロン株の影響を考慮すると、最終的にコロナによる超過死亡はスペイン風邪に迫るとも考えられている。ただし、ここでいう超過死亡とは、コロナ前の各国の死亡者数のトレンド(推移や傾向など)から、コロナが流行しなかったと仮定したときに予測される2年間の死亡数を計算。その数を、実際の全死因による総死亡者数から差し引いた数になります」
「1000万人」の過少報告
一方でWHOに報告された各国の同期間におけるコロナ死亡者数は計540万人に過ぎず、1000万人近くが過少報告されていた形だ。その理由を浦島氏がこう説明する。
「日本など各国のWHOへの報告数は、PCR検査陽性者が死亡したケースのみカウントされています。他方、超過死亡にはコロナで亡くなったにもかかわらず他の死因で届けられたケースや、医療逼迫により適切な治療を受けられずに亡くなったケースなども含まれるため、届け出数より多くなっている」
日本でも適切なタイミングでの治療を逸した救急患者の存在(救急搬送困難事例の増加)や、感染を恐れて糖尿病や高血圧などの持病があるにもかかわらず病院から足が遠ざかる「受診控え」の問題など、コロナ禍に起因する“コロナ関連死”が相当数にのぼるとも指摘されている。
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