中国全土で燃え広がる「反ゼロコロナ」騒乱の深層 “強権鎮圧”のキッカケは「自由」を叫んだ清華大学デモと「エリートの反乱」
「習近平退陣」「全国の封鎖を解け」「言論の自由を」……公然と叫ばれる政権批判とともに中国全土で燃え広がったゼロコロナ政策に対する抗議活動。中国当局は治安要員を大量動員して抑え込みに躍起だが、武装警察とデモ参加者の衝突が激しさを増す事態へと発展している。実は前代未聞の「デモ騒乱」の裏には、政権の逆鱗に触れたある“メッセージ”と、習近平総書記の心胆を寒からしめた抗議集会の存在があったという。
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【写真】政権の神経を逆撫でした問題の清華大学でのデモの一コマ
発火点となったのは11月24日、新疆ウイグル自治区ウルムチ市で10人が死亡した火災だった。封鎖用の柵などが消火活動を妨げたと伝えられ、26日以降、上海や北京などの大都市へ「反ゼロコロナ」を掲げたデモが飛び火。しかし、ここに来て拡大の一途だった騒動の潮目が変わる重大局面を迎えているという。
「29日以降、北京や上海など大都市で開かれた抗議集会に次々と武装警察が投入され、バリケードの設置などでデモの中止や解散が強制的に行われています。これら問答無用の鎮圧手法により、全国の主要都市50カ所以上で発生したデモの勢いが削がれ始めている」(大手紙中国特派員)
中国事情に詳しいシグマ・キャピタル代表取締役兼チーフエコノミストの田代秀敏氏がこう話す。
「デモが全土へと拡大する初期の頃、上海で抗議集会を目撃した中国人と電話で話す機会がありましたが、“まるで1989年の天安門(事件)前夜のようだ”と衝撃を受けていました。しかし同時期、上海の別の中国人と電話で話すと“抗議デモがどこかで起きているらしい”ことは知っていても、具体的に何が起きているかはまったく知らなかった。国営メディアが今回の騒動を一切報じていないためです」
「VPN」「テレグラム」「微博」などのSNSを駆使
デモ参加者の多くは10代や20代の若者とされ、彼らが中国のネット検閲をかいくぐるVPN(仮想プライベートネットワーク)やテレグラムを使い、デモ情報を拡散。そのため「デモに駆け付けた警官が参加者のスマホをチェックしてVPN接続の有無やテレグラムなどのアプリをインストールしていないか確認している」(前出・特派員)という。
一方でデモの広がりには既存の「微博」や「微信」といった中国版のLINEやTwitterの果たした役割も大きいという。
「微博や微信にはデモ関連の情報が削除されても削除されても次々と投稿され、それを目にした市民が即座にダウンロードして保存。そして新たに投稿を繰り返すといった、圧倒的な人口に裏打ちされた“人海戦術”が展開された。それにより、デモが一気に拡大したわけですが、そのスピードは政権側も想定外のものだったとされます」(田代氏)
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