米ゴルフPGAツアーの「PIP」とは何か? 不可解なルールで2年連続1位はタイガー・ウッズ

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恣意的なランキング?

 さて、「PIPって何?」と首を傾げている方々のために説明させていただこう。

 まだリブゴルフの創設が噂の段階だった2021年のある時期、PGAツアーは新たなツアーが実現することには疑問を抱きつつも、万が一に備え、新しいボーナス制度を設けて選手の流出を防ごうと考えた。そこで突如考案され、いつの間にか実施されていたのが、PIP(プレーヤー・インパクト・プログラム)だった。

 その仕組みは、各選手のGoogle検索の結果やSNSでの登場頻度を数値化し、さらにランキング化して、トップ10に入った選手たちに総額4000万ドル、1位には800万ドルのボーナスを支給するというものだった。選手たちの間では「単なる人気コンテストにすぎない」と冷笑されていた。

 そして、暮れも押し迫った昨年12月、フィル・ミケルソンが「PIPで優勝したのは僕だ。僕が800万ドルをゲットした」とTwitterで発信。それを聞いた誰もが「へー、そうなんだ」と思っていたのだが、今年3月にPGAツアーから正式に発表された2021年の最終結果は、驚くなかれ、1位がウッズでミケルソンは2位だった。

 そのタイミングは、ちょうどミケルソンがPGAツアーを批判する数々の問題発言を口にして大騒動になった直後だった。

 PIPの1位が恣意的にミケルソンからウッズに変えられたのではないかと見る向きもあり、端から冷ややかな目で見ていた選手の多くは「やっぱりPIPは単なるウッズ対策だ」と一層冷めた目を向けた。自分が2位と知らされたミケルソンは、結局、完全に沈黙。そんな奇妙な食い違いを引き起こしたPIPには、不透明性や曖昧さがあるように感じられた。

 だが、今年6月のリブゴルフ創設後、PGAツアーはPIPをリブゴルフ対策のための最強の武器のように扱い始め、2022年のボーナス総額を当初予定されていた5000万ドルから1億ドルへ倍増。1位が手にするボーナスも1000万ドルから1500万ドルへと増額された。

 対象選手もトップ10からトップ20へ拡大され、今年は単なる「人気度」ではなく、社会における「認知・認識度」をランキング化するとされていた。

 しかし、シーズンが終了し、いざ発表された2022年のPIPの結果は、「実際にはPGAツアーへの貢献度が最も重視された」と、あるツアー関係者が米スポーツイラストレイテッド誌に明かしたそうだ。だからこそ「選手会を緊急招集してPGAツアーへの忠誠を誓い、結束を図ったウッズとマキロイが、ワンツーフィニッシュする結果になった」というのが大方の米メディアの見方だ。

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