岸田総理側近が周囲に「地獄が始まる」 公明党への配慮で骨抜きの「救済新法」、岸田派の中堅や若手も不安視

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 二度あることは三度ある。2人目が閣内から去ったわずか1週間後に総務相が辞任に追い込まれた。岸田内閣は三度目の正直とばかりに、今度こそ反転攻勢を狙うも、すでに国会は無間地獄の様相だ。前途多難の孤独の宰相。極楽から垂れ下がる蜘蛛の糸はいずこに。

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 岸田文雄総理が前法相を事実上更迭し、東南アジアを歴訪していた最中、日本に居残っていた側近の一人は周囲にこう呻(うめ)いた。

「21日の週から政権にとっての地獄が始まる。少なくとも年末までは……」

 彼が言う「地獄」は11月19日深夜に帰国した岸田総理の目前に早速、姿を現した。

「週刊文春」により政治とカネの疑惑を立て続けに報じられていた寺田稔総務相。その去就を判断する必要に迫られたのだ。

「寺田さんは最後まで辞任する気はありませんでした」

 と、政治部デスク。

「疑惑に対し、委員会で答弁するために役所が作ったペーパーには、寺田さんに気を使ってややあいまいな表現でぼかす箇所もありました。ところが、寺田さんは自分なりに解釈して断定調に直して答弁していた。法に触れていないという点でよほどの自信をお持ちだったのです」

 そんな中、岸田総理は帰国翌日の午前中に散髪のため、ヘアモードキクチ神田日銀通り店に向かった。

「総理の施術は銀座本店のスタッフが担当しています。店舗の広さなどセキュリティーの関係もあって銀座ではなくこちらで切っています」(店舗スタッフ)

更迭直前のハプニング

 国民の怒りが沸点に達しているにもかかわらず、散髪とはのんきに見えなくもないが、総理は頭もサッパリしたその日のうちに寺田氏を更迭。かねて懸念を示していた、この国会で成立させる予定の総額29兆円に上る補正予算案への対応に臨むためだった。

「寺田さんを辞めさせずに委員会を開けば、野党は追及を強め、予算を人質にして、寺田さんの辞任を迫る可能性が強かった。すると、さらなるダメージを負うのは確実でした」(前出政治部デスク)

 対策のため外遊中に自身の最側近、木原誠二官房副長官を日本に残らせた。

 木原氏は外遊先での日中首脳会談から総理に同行する予定だった。しかし、それを変更し、表向きは統一教会の被害者救済に向けた新法の調整のためとして、東京にとどまったのだ。

 自民党関係者が言う。

「実際には寺田問題の処理のために同行しなかったといわれています。更迭すれば、新大臣の認証式のために天皇陛下の日程も押さえなくてはなりませんから」

 20日、総理公邸で官邸高官による断続的な協議が行われるも、更迭直前にはこんな「ハプニング」が。

「茂木敏充幹事長が“俺は辞めるなんて聞いてない”と機嫌を損ね、“今のタイミングで辞めさせるのはおかしい”と官邸に対し反対意見を言い出したのです」(同)

 が、その意見は採用されず、結果的に、寺田氏の後任は民主党出身で麻生派の松本剛明元外相に決まり、予算案は21日、国会に提出された。

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