「silent」が記録更新中のTVer 民放テレビ局に入る分配金はどれくらいなのか

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 2015年に始まった民放公式テレビ配信サービス「TVer(ティーバー)」の存在感が高まっている。フジテレビの連続ドラマ「silent」(木曜午後10時)が再生数の記録を次々と塗り替えているからだ。もっとも、TVerに関しては誤解が渦巻いている。

TVerが好成績ならコア視聴率も高い

「silent」がTVerの再生回数の新記録を更新し続けている。10月27日放送の第4話は配信後1週間で582万回も再生され、新記録を達成した。自らが第2話で達成した489万再生の新記録を塗り替えた。

 あるフジ制作者は「TVerは『silent』のいいPRになりました」と喜ぶ。「silent」は民放の売上高と連動するコア視聴率も断トツだからである。TVerが好調であることを知り、「観てみよう」と思った人もいるのではないか。

「『silent』の視聴率は低いのでは?」と思う人もいるかも知れないが、それは誤解。2年半前からテレビ界では実務に使われていない世帯視聴率が6~7%程度であることを見て、「低視聴率」と言う人もいるからだろう。テレビマンでそう思っている人は誰一人としていないと言って良い。

 今のテレビ界の標準指標は個人視聴率だからである。スポンサー側も同じだ。民放は番組が高視聴率を獲ると、「~%獲得」と書いたポスター大の紙を貼り出すが、フジの貼り紙のどこを見たって「世帯視聴率」という言葉はない。書かれているのは個人視聴率とコア視聴率のみだ。

 個人視聴率は性別から年代、家族内の立場まで正確に計測する。その中から13歳から49歳までを切り取ったものが、民放の重視するコア視聴率である。「silent」は4.9%もある(11月17日放送の第7話、ビジオリサーチ調べ、関東地区)。

「silent」のコア視聴率はプライム帯(午後7時~同11時)の連ドラの中でぶっちぎりのトップ。そうでなかったら、世間でこれだけ話題になるはずがない。使われていない世帯視聴率で低視聴率の烙印を押されてしまうのは可哀想だ。

 なぜ、テレビ界は世帯視聴率を使わなくなったか。まず視聴人数すら掴めない。その上、高齢者(65歳以上)の好む番組が高視聴率になりやすいためである。大きく偏る。これが致命的欠陥だ。

 猛スピードで進んだ少子高齢化のせいである。1980年には約25%に過ぎなかった高齢者のいる世帯が、今は約50%になっている。偏るはずである。人口構成と世帯構成を読み取らないと視聴実態が浮かび上がらないのも世帯視聴率の難点だ。

視聴率第一主義は変わらないが――

 そもそも「silent」を含む連ドラのほとんどは最初から高齢者向けにつくられていない。世帯視聴率が高くなるはずがないのである。

 ちなみに11月14日(月)から20日(日)の連ドラのコア視聴率の2位以下は次の通り(2)「アトムの童」(TBS)3.2%(3)「PICU 小児集中治療室」(フジ)2.9%(4)「エルピス-希望、あるいは災い-」(フジ系)2.5%(5)「相棒」(テレビ朝日)2.2%(5)「invert 城塚翡翠 倒叙集」(日本テレビ)2.2%――。上位作品は話題性と一致しているのではないか。

「TVerによって視聴率第一主義は崩壊した」という声もあるようだが、やはり実情とまるで違う。これも世帯視聴率で考えるから生まれる間違いだ。

 民放は相変わらず視聴率第一主義だし、NHKも視聴率を大いに気にする。ただし、どちらも視聴実態が正確に掴める個人視聴率だ。民放の場合、中でもコア視聴率を重んじる。各民放の決算書類を見ると、コア視聴率と売上高は連動している。

 TVerの利益で民放の経営が成り立つとは誰も思っていないだろう。フジ制作者は「『silent』のお陰で、TVerで儲かった」とは決して言わない。そもそもTVerは絶対に大きくは儲からない仕組みになっている。

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