世界の人口は2050年頃「90億人」で頭打ちか その意外な原因と新たな難題とは
人口増加、なぜペース減
所得水準が低い国々の人口増加が地球環境の持続可能性にとって脅威であることはたしかだが、「人口増加の速度が減速している」ことも気になるところだ。
国連が最も可能性が高いと考える中位推計では、90億人に到達する次の節目は2037年となる。80億人から90億人に増加するために15年かかる見通しだ。
さらに90億人から100億人になるのは21年後の2058年だという。
10億人増加に要する期間が12年から15年、さらには21年と長期化する理由は人口増加率の低下だ。
人口増加率は1963年にピークとなり(2.3%)、その後減少に転じた。1990年代には1.5%を下回り、2020年には1%を割り込んだ。国連の予測では2040年代に0.5%を下回り、2086年に人口が減少に転じることになっている。
人口増加率の低下は出生率の低下が大きく影響している。
国連が今年7月に発表した報告書によれば、出生率の世界平均は1950年に約5だったが、昨年は2.3になった。人口規模の維持に必要な出生率は2.1だが、世界人口の3分の2は出生率2.1未満の国・地域で暮らしている。
世界的な出生率の低下には、乳幼児死亡率の改善や教育水準の上昇、家族計画の普及など様々な要素が関与している。
アフリカなど低所得国の出生率は4.5と高い状況が続いているが、「低所得国でも出生率の低下が今後急速に進む」と主張する専門家は少なくない。
彼らが想定する世界の人口予測は国連の推計とは大きく異なっている。
「世界の人口は2050年頃に90億人となり、その後減少に転じる可能性が高い。今世紀末には現在と同水準にまで戻る可能性がある」
このように主張するのは「2050年 世界人口大減少」の著者、ダリル・ブリッカー氏だ。フランスの名門調査会社イプソスのグローバルCEOを務めるブリッカー氏は「低所得国でも若い女性への教育が普及し、避妊の動きが広がりつつある」と指摘する。
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