ある日、胃がんが発覚したアラフィフ夫 それを知った妻と不倫相手の反応で感じた“2人の性格問題”
最新の司法統計をみると、離婚調停を申し立てる理由に「性格が合わない」が最も多い。数字にして妻の約37.5%、夫の約59.6%である(令和2年度データ)。昔から「性格の不一致」はよくある離婚の原因だ。だが、実際にはそこにさまざまなきっかけがあり、10組いれば20通りの理由があるのではないだろうか。
男女問題を30年近く取材し『不倫の恋で苦しむ男たち』などの著作があるライターの亀山早苗氏が今回取材した男性も、簡単に言えば「性格の不一致」で妻との関係解消を決断したケースだ。だがこの夫婦にも「不一致」だけでは片づけられない、複雑な事情があるようだ。
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「離婚を選んだのは自分のわがままなのだろうか」
そんなふうに悩んでいる男性がいる。佐々野貴典さん(49歳・仮名=以下同)だ。一度家庭を持ったら、もう自分の自由はないのだろうか。すべてを家族のために捧げなければいけないのだろうか。
「離婚を切り出すタイミングってむずかしいですね。もっと時期を熟慮すべきだったかもしれません」
貴典さんはため息をつきながらそう言った。週末、とある繁華街のカフェに現れた彼は、Tシャツに革ジャン、ジーンズという若々しいファッションがよく似合っていた。そう言うと、「本当は金髪にでもしたいところなんですけど」とこめかみに出ている白髪を恥ずかしがった。
「サラリーマンはそうもいかないですからね。本当はサラリーマンも向いていなかったし、結婚して家庭をきちんと維持するのも向いていなかったのかもしれない」
結婚したのは30歳のとき。知り合ったのはその1年前で、相手は友人の結婚式の二次会で知り合った2歳年下の佳恵さんだ。屈託のない笑顔に一目惚れしたという。ところが当時、彼女は婚約していた。
「アプローチしても振り向いてくれない。理由を聞いたら婚約しているって。でも僕はめげませんでした。彼女と結婚するのは僕のはずだと思い込んだから。彼女が好きだと言っていたミュージシャンのチケットを必死で予約したり、行きたがっていると共通の友人から聞いたジャズバーに連れて行ったり、できる限りのことはしました。もちろん、見返りなんて求めない。好かれるために努力を重ねて、ダメなら諦めるつもりでした」
彼女の気持ちが傾いてきたと感じたのは3ヶ月ほどたったころ。婚約者の愚痴や不安を聞いたのだ。彼が母親の言いなり、自分を下に見ている気がする、などなどを聞いて、「客観的に言うけど」と彼は“説教めいたこと”を彼女に言った。
「相手を本当に大事に思っていたら、自分に従わせようとはしないものだよ。対等だと思ってないから自分が正しいって主張するんだよ。そんなことを言ったら、彼女の僕を見る目が少し変わったんです」
彼女は彼と別れ話をしてくると言い出した。僕がついていこうかと言うと、「自分のことは自分でケリをつける」と佳恵さんは言った。そして数日後、「別れた。今から会いたい」と電話をかけてきて、貴典さんの部屋に初めて泊まった。
それから数ヶ月後には婚姻届を出して一緒に暮らし始めた。頃合いを見計らって会費制の簡単なパーティを開催。友人知人には気楽で楽しいパーティだったと評判がよかったという。
「結婚パーティって、特に料理なんて気にしてないでしょ、誰も。でも僕は、みんなにおいしいものを食べてほしかったんです。だから職場でグルメと評判の先輩に頼んで、いいレストランを紹介してもらいました。ご祝儀やプレゼントなし、きっかり5,000円。実際には8,000円の料理で差額は僕が負担しました。レストランの貸し切り代はかなりまけてもらったけどこちらで出した。いつもお世話になっている人や大事な友人が僕らのために時間を使ってくれているので、そういうところはきちんとしたかったんです」
貴典さんは「自分なりの正義」にこだわるタイプのようだ。佳恵さんも、そういう貴典さんに心を動かされたのだろう。
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