アルコール依存症の父、蒸発した母を持つ「実家が全焼したサノ」 結婚を決めて母に抱いた複雑な感情とは

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アルコール依存症の父、蒸発した母

 新橋でサラリーマンとして働きながら、ツイッターやnoteで自身の切ない日常の出来事をつづり、多くの読者の共感を呼ぶ、実家が全焼したサノさん。幼い頃、不仲な両親を見て育った彼が結婚を決めたとき、心に浮かんだのは母親の顔だった。

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 子どもの頃に、母と父のなれ初めを聞いたことがありました。母は元々デート商法で高級布団を売りつける天才で、父にまんまと高級布団を売りつけたそうです。一方で父は女遊びの天才で、高級布団を買うことを口実にデートを重ね、デキちゃった婚の末に、二人は結ばれたそうです。

 自己紹介が遅れましたが、そのデキちゃったのが、僕です。そんな両親は、僕の物心がついた頃からけんかが絶えませんでした。原因は、父の酒癖の悪さでした。父はアルコール依存症で、病院にも通っていましたが、最後まで良くなりませんでした。母はそんな父に愛想を尽かして、僕が小学生の頃に蒸発しました。しばらく父と2人暮らしをしていましたが、やはり父は酒をやめられませんでした。さらに仕事の失敗や、ギャンブルにより、数百万円の借金を作ってしまいました。あまりに成育環境が悪いということで、僕は親戚に引き取られました。

結婚で増した「仲間感」

 結局父は、僕が中学生の頃に亡くなりました。そんな家庭環境だったため、僕はなんとなく生涯独身でいようと思っていました。独身でいたいというよりは、円満な家庭を維持するのが、総理大臣になるよりも難しそうに思えたのです。しかし、そんな僕にも「英国風パブHUB」のハッピーアワーで出会った彼女ができて、その彼女に先日プロポーズをしました。デキちゃってません。世の中には、父と母のような人は少数派で、相手次第では僕も穏やかな共同生活ができそうだと、社会経験を経て学んだからです。

 これから結婚するといっても、生活は何も変わりません。しかしどことなく、「仲間感」が増したような気はしています。その仲間感というのは、僕と彼女、二人だけの間に存在するものではなく、互いの家族も含めての、仲間感です。本来他人であるはずの恋人の両親さえも、婚約した途端、なんとなく仲間のように感じられるのだから、不思議です。

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