「ザ・トラベルナース」が成功した確たる理由
監督は代わった
「『ドクターX』の米倉涼子が演じる大門未知子の決めセリフ『私、失敗しないので』や『いたしません!』は番組名物になりました。大門が手術後にコップにいっぱいのガムシロップを一気飲みするシーンも印象的で、彼女のキャラを際立たせました。もともと中園さんはコピーライター出身の脚本家ですから、決め台詞やアイテムを登場させるのは得意。今回も中井が演じる九鬼は、丁寧語でナイチンゲールの教えをたびたび披露し、いつも掃除をしている謙虚キャラですが、ここぞというときには『クソ食らえです!』と強く言い放ちます。『医者は病気を診て、病気を治す。ナースは人を見て、人を治す』という名言も、ドラマのコンセプトを打ち出す名セリフになっています」
九鬼が広島弁でヤクザの如く恫喝するシーンが最近は見られないのが寂しいが、
「ラストの決定的なシーンに取ってあるのかもしれません。また『ドクターX』との共通点といえば、音楽も同じく作曲家の沢田完さんが担当しています。『ドクターX』ではウエスタンぽい曲が孤高の天才フリー外科医の大門の世界観を醸し出すことに成功しましたが、『トラベルナース』でも、那須田と九鬼の関係性を際立たせ、ドラマに引き込まれる楽曲が散りばめられています」
「ドクターX」と明らかに異なるのは監督という。
「監督だけは『ドクターX』スタッフではありません。チーフ監督の金井紘はもともとフジテレビの社員で、『コンフィデンスマンJP』や『ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~』を担当し、3年前に独立した後は『コントが始まる』(日テレ)なども手がけています。テレ朝の上層部は、『ドクターX』と同じ枠で医療モノではあるものの、監督だけは代えた。コメディー要素もある『トラベルナース』には新たな演出家として、フリーランスの監督を迎えたのです」
人気シリーズだった「ドクターX」の後継番組で、監督だけを代えるというのは思いきったものだ。
「ヒット作を連発してきた脚本家、作曲家、そして監督を揃えたテレ朝の戦略勝ちでしょう」