「ザ・トラベルナース」が成功した確たる理由
今シーズンは医療ドラマが3本ある。玉森裕太(Kis-My-Ft2)が研修医を演じる「祈りのカルテ 研修医の謎解き診察記録」(日本テレビ)。吉沢亮が小児科医の「PICU 小児集中治療室」(フジテレビ)。そして、岡田将生と中井貴一が看護師という「ザ・トラベルナース」(テレビ朝日)。このうち「トラベルナース」が断トツの視聴率を稼いでいる(視聴率は、ビデオリサーチ調べ、関東地区・世帯)。
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「トラベルナース」の初回視聴率は11・9%と、今シーズンの新作ドラマではトップだった。その後も好調を維持し、11月17日の第5話は12・1%と上り調子だ。
一方、「祈りのカルテ」は初回6・6%で、その後も5~6%台のまま。「PICU」は初回10・3%だったが、21日放送の第7話では8・3%にまで落ちている。この差はなんなのか、民放プロデューサーが分析する。
「まず注目すべきは、『トラベルナース』がオリジナル脚本ということです。各局が人気のあるマンガや小説といった原作ものをドラマ化することに躍起となっている中、テレ朝は『相棒』同様、オリジナル作品にこだわっています」
「祈りのカルテ」は知念実希人のベストセラー小説が原作だ。原作ものは一定層のファンがいるため、数字が見込めると聞く。
「ところが、原作者や出版社とのしがらみが多く、制作にあたっては色々と気を遣わなければなりません。中には脚本にまで口を出す原作者がいるため、ドラマのプロデューサーは思うように制作できなくなるケースもあるのです」
もっとも、「PICU」も倉光泰子によるオリジナル脚本だ。
「ドクターX」の副産物?
「『PICU』は連ドラでは初となる“子供のICU”を描いていますが、小児科医というテーマは決して目新しいものではありません。これまでの医療ドラマは、外科医、産婦人科医、救命救急医などの専門医、または『祈りのカルテ』のように研修医を主人公に設定したものが多かった。『トラベルナース』が“男性看護師”に焦点を当てたのは斬新だと思います」
しかも、日本にはいない“ナース・プラクティショナー”に目を付けた。
「このコンセプトが生まれたのは、スタッフが『ドクターX~外科医・大門未知子~』のテーマとなる珍しい病気や手術の症例を探すために海外の最新医療論文をリサーチしていた際、たまたまナース・プラクティショナーという資格を知ったことがきっかけだといいます。日本で馴染みのない職業なのも、当然というわけです」
いわば「ドクターX」の副産物だったのだ。脚本は「ドクターX」と同じ中園ミホ。デイリー新潮は「『ドクターX』ファンも大満足 新BIG3と言われ始めた『ザ・トラベルナース』の楽しみ方」(11月3日配信)で、「ドクターX」との共通点を報じた。
「アメリカでナース・プラクティショナーだった那須田歩(岡田)が日本に呼ばれ、どれだけスーパーな看護師ぶりを見せつけるのかと思ったら、それを上回るフリーランスの優秀な看護師・九鬼静(中井)がいたというのが、『ドクターX』とは決定的に違うところでしょう。岡田と中井という俳優が看護師を演じることも、近年の男女平等、ジェンダーレスな時代にも合うテーマなので、幅広い視聴者にウケているのです」
とはいっても、共通点は少なくない。
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