偏差値は1千万円でいくつ上がる? 「中高一貫校」と「公立コース」どちらがいい? 成田悠輔×藤沢数希 コスパに見る東大合格大作戦

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日本の受験制度は能力主義の完成された形

藤沢 学部・修士までの勉強と博士のそれには大きな隔たりがあります。修士までは、基本的に教科書に書いてあることを理解して必要な知識を覚えていけばいいだけですが、博士課程はなにか新しいことを研究して、人類の知の限界を広げることが求められる。しかし、ほとんどの日本人が大学に求めているものは、学歴だけなんですね。

成田 日本は、GDPに対する教育投資の水準では、OECD平均を下回るぐらいの控えめな投資です。にもかかわらず、達成度調査で見ると、そこそこ頑張ってるじゃないですか。つまり、かなりコスパのいい形で、教育がなされているといえます。受験も「ペーパーテスト」という透明かつ客観的な基準で決めるから、どんな生まれの人でも、人格破綻者であっても基本的にOK。価値観の自由度を許した、ある種の能力主義・実力主義の完成された形ですね。

4年で5千万円かかるアメリカ私大の現状

――アメリカは実力主義に見えますが、実情はどうなんでしょうか。

成田 日本とは全然違いますね。母国語であるはずの英語もうまく話せなくて、四則演算も怪しい人が人口の数十%みたいなレベルで存在している国。ミニマムでベーシックな教育を、国民全体に提供するという、基本的な公立教育機能を果たせていないんです。

藤沢 大学の学費の高さも日本の比ではないですね。

成田 アメリカの有名大学を中心とするいわゆるエリート教育については、すごくわかりやすい格差の温床とも見ることができます。どういう家に生まれて、どれぐらいお金があって、どれぐらいボランティアや社会活動などわかりやすい経験値を貯められるかがものすごく重要です。それらの要素の総合的なポートフォリオ(振り分け方)によって学部の合格不合格が決まる。たまたま資産のある名家に生まれた人がすごく有利になる仕組みが堂々と機能しているんです。私がいるイェール大学だと学費が約6万ドル、つまり、1年で900万円。さらに寮に入らなくてはいけないし、学費+家賃+食費だけで1年間に1100万円はかかる。4年間通わせて額面通り払うと、5千万円ぐらいかかるっていうのが、アメリカの私立大学の現状です。

藤沢 あまり知られていませんが、アメリカの有名大学には、ペーパーテストの入学試験がない。日本のAO入試に近い仕組みです。

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