偏差値は1千万円でいくつ上がる? 「中高一貫校」と「公立コース」どちらがいい? 成田悠輔×藤沢数希 コスパに見る東大合格大作戦

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学歴をコスパで考える

藤沢 日本で大学進学を目指すことになる子供の大半は、これは東京や大阪といった大都市圏に顕著ですが、中学受験を経て中高一貫校から大学受験するか、公立中学に進み、進学実績のある高校に入学してから大学に進学するかのどちらかになります。私の最新刊『コスパで考える学歴攻略法』(新潮新書)では、各家庭が中学受験と高校受験のどちらを選択するべきか考え、それぞれの選んだ道で、子供が学歴獲得競争で勝つための戦略を論じています。日本社会においては、大学を出たか、どの大学かは、その後の人生において大きな意味を持ちます。知性というか仕事の実力があるかはさておき、世間にとってはわかりやすい「学力と真面目さ」の指標です。だから、それを獲得するのに親御さんがお子さんに多大な投資をするのはわかる気がします。それなら、費用対効果を考えて、うまくやろうよというのが本書の主旨です。

〈藤沢氏の新刊は、中高一貫教育の利点、公立コースのコスパの高さとその弱点など、学歴を獲得するためのクールでドライな分析が読みどころのひとつ。たとえば、中高一貫教育の進学校に通うと、公立の中学、高校に行ったケースに比べて、いくら余計にかかり、どれくらい偏差値を上げることができたのかなどについても論じている。〉

1千万円で偏差値+3

藤沢 いわゆる「受験エリート」がたどる典型的な道があります。幼稚園から公文(くもん)に入り、たとえば数学なら、小学4年生には中3の範囲まで終えてしまう。そして、小学校の高学年では、SAPIXとか浜学園といった有名塾に在籍してひたすら勉強し、開成、筑駒、灘、桜蔭なんかの名門中学に入るんですね。その後、鉄緑会という東大受験専門塾に入って、中3までに高3の英語と数学の学習範囲をやっちゃう。それから、高1でもう1周、高2でさらにもう1周、受験の前の年までには、3周もして、東大の普通の学部に受かるようにする。そして、仕上げにもう1周して、東大理三に受かるようにする。「受験エリート」は、特訓に特訓を重ねるアスリートみたいなもので、この超先取りとスパイラル方式のカリキュラムはやりすぎというか……。

成田 日本の受験は「ペーパーテスト一発主義」だから、それに通れば他はなんでもいいんですよ。それなのに、そこに至る贅沢な時間の余白を、行きすぎた準備で埋めちゃって、もったいないなぁと。

藤沢 中学と高校が公立でも、受かる人はちゃんと受かりますね。公立コースを進んだ子供たちは私立一貫校の生徒たちがやっている先取り学習をやっていないので、進度が遅い数学が弱点といえば弱点です。でも、逆にそれを克服すればいい。私立中高一貫校に通うと、公立中学→公立高校コースに比べて、約1千万円くらい余計に学費がかかりますが、学力がどれくらい変わるかというと、あるデータによれば、英数国の平均で偏差値3くらい。つまり、大学受験の偏差値+3は1千万円で買えるということかもしれません。

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