ドラマ「silent」の聖地になった「世田谷代田駅」、“紬”と“想”も知らない「見捨てられた駅」の劇的ビフォーアフター
地下化工事で生まれた“聖地”
“見捨てられた”とはどういうことか?
「小田原方面へ行く下りホーム側にはちょっとした駅舎のようなものがありましたが、新宿へ行く上りホームは、小屋みたいなところに券売機がひとつ、自動改札機がひとつかふたつかあって、階段を3、4段上ったらもうホーム。“路面電車の停留場か!”っていうぐらい駅の入り口とホームが近かった。東京の駅ってホームに着くまで階段上がったり下りたりがあるのが普通じゃないですか。それが階段3、4段のみ(笑)」
改札を通ればすぐホームと、利用者としてはとても便利な駅ではあったが、
「過疎地で似た駅を見たような……。だから、ここ東京だよな? 23区で一番人口の多い世田谷区だよな? なんでこんな駅が残されているんだろう。小田急、この駅を捨ててるな、と思ったものです。駅前も寂しくて、飲食店はポツンポツンと数軒あるだけ。あとはコンビニ2軒と薬局と日用品店、和菓子屋と茶舗ぐらいしか店がなかった」
もちろん、開発計画があったから手をつけずにいただけだろうが、ドラマで世田谷代田駅を初めて知った人からすれば、信じられないほどギャップのある光景がそこにあったのだ。
なお、川口が立っていた駅名板の下も、目黒が座っていたベンチも、どちらもかつては線路やプラットホームだった。代田富士見橋は環状七号線をまたぐ跨道橋で、激しく電車が行き交っていた。ファンが写真を撮っている“聖地”は、全て小田急線の地下化工事で生まれた新しい場所だ。
世田谷代田駅のみならず、「silent」の撮影地には、地下化によって生まれた線路跡地が数々含まれている。
「世田谷代田駅」オススメの絶景
最後に世田谷代田駅で、ぜひ見てみたい景色をご紹介。地上時代の旧駅舎では、跨線橋に「富士見窓」があり、真っ直ぐ続く線路の向こうに富士山が見えた。
その富士見窓は形を変えて受け継がれている。地下ホームから長いエスカレーターを上がっていくと、地上に出たところで視界が一気に開け、改札の向こうに富士山がドーンと見えるのだ。出口がちょうど額縁のようになり、現代の「富士見百景」とも言える光景が広がる。もちろん、富士山が見えるかどうかは気象条件次第となるが、この景色の素晴らしさは特筆ものだ。
改札のさらに先には前出の「代田富士見橋」があり、以前から富士山の写真を撮る人がよくいた。なお、反対側の改札を出てすぐの場所には、箱根から温泉を運んでいる高級旅館「由縁別邸」がある。ここもかつての線路とホーム跡地に作られた。
すっかりきれいになった世田谷代田駅周辺。掲載している写真と見比べながら歩くのも楽しそうだ。
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