ドラマ「silent」の聖地になった「世田谷代田駅」、“紬”と“想”も知らない「見捨てられた駅」の劇的ビフォーアフター

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 今クールのドラマで最大の話題作といえば「silent」(フジテレビ)。女優・川口春奈演じる青羽紬と、ジャニーズ所属のアイドルSnow Manの目黒蓮演じる佐倉想が織りなす、切なく優しいラブストーリーが視聴者の心をつかんだ。視聴率はヒト桁なものの、TVerで爆発的な視聴回数を記録している。【華川富士也/ライター】

 そして、「silent」の人気が上昇するにつれ、訪れる人が増えている場所がある。小田急線の世田谷代田駅だ。作品の印象的なシーンに登場したことで、いわゆる「聖地巡礼」する人が後を絶たない。平日でもその姿があり、土日ともなればたくさんのファンが集まっている。

 紬(川口)が立っていた駅名板の下や、想(目黒)が座っていた改札前のベンチ、追いすがる紬を想が「うるさい」と振り払った「代田富士見橋」の上が人気の撮影スポットだ。

「本当に世田谷区の駅なの?」

 その世田谷代田駅。ドラマで見られるような現在の姿になったのは、ほんの1年半前のこと。それまで17年間、地下化に伴う工事が続いていた。

 今でこそ世田谷区の一等地にふさわしい落ち着いた雰囲気の駅舎と、きれいな駅前広場が備えられているが、以前はその場所にホームや線路があった。代田富士見橋は電車が走る跨道橋で、当然ながら人が歩くなんてもっての外。橋と駅の間には、時間帯によってはなかなか開かない踏切があった。

 また、世田谷代田駅は、利用者数が小田急線でワースト10に入る少なさの上に、長く線路で南北を分断され、環状七号線が立ち塞がるように近くを横切っていたため、駅前が発展しなかった。いまとは全く違う寂しい光景が広がっていたのだ。

 世田谷代田駅~東北沢駅間は、当初は高架での複々線化が計画されていたが、反対住民による訴訟をきっかけに地下化へと切り替えられ、2004年から工事が始まった。

 古くからの住民はかつての駅を思い出してこう言う。

「地上にホームがあった頃は、本当に世田谷区の駅なの? 下北沢の隣? と思っちゃうほどのみすぼらしさで、正直、“見捨てられた駅”だと思っていました」

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