W杯開催国「カタール」に悪評噴出 中東の専門家は「成金体質から抜け出すことが必要」

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時間が解決

 例えば、外国人労働者は祖国に住む妻や家族に仕送りするため、できる限り倹約して生活している。その姿を見たカタール人は、「異様な生活様式」と感じてしまうという。

「マンションに数人が相部屋で暮らしているのを見ると、欧米人なら『労働環境に問題がある』と判断するでしょう。ところが普通のカタール人は、『何であんな狭くて汚いところで生活しているんだろう』と驚くものの、そのまま思考停止してしまうのです。結果として、劣悪な住宅環境を改善しようという機運は生まれず、欧米各国から批判されることになりました」(同・佐々木氏)

 出稼ぎ労働者に対する劣悪な待遇やLGBTの人権が蹂躙されているといった問題は、時間が解決してくれるという。

「サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)といった国は、豊かになってからの歴史もだいぶ長くなりました。“成金”から脱し、欧米諸国とも価値観を共有できる場面が増えています。しかし、昔は反欧米のイデオロギーが強く、ことあるごとに対立していました。カタールも同じ過渡期にあると言えるでしょう。豊かさを当たり前と思う国民が増えるほど、欧米的な価値観の理解も増していくはずです」(同・佐々木氏)

ビジネスチャンス

 むしろ佐々木氏が懸念するのは、カタールが豊富なオイルマネーをどう使うか、根本的な方針が定まっていないことだという。

「UAEのドバイは、イギリス人のアドバイザーを厚遇し、観光政策に力を入れ、外国企業を誘致するなど、“ポスト・オイルマネー”を巡る根本方針を定めたことが国家の発展に寄与しました。一方のカタールは、まだまだ手当たり次第に資金を突っ込んでいるという状況です。その象徴が、まさにW杯でしょう。混乱が起きるのは当然です。『国際的なスポーツイベントを恒常的に行うことで国威を発揚する』というような長期的なビジョンに立って誘致したわけではないからです」

 豊富なオイルマネーを効果的に運営するため、日本の経済界が寄与できる場面も少なくないという。

「カタール政府に天然ガス田の開発を助言したのは日本企業でした。豊かになったカタールがどのような経済運営を行うかについても、日本の政府や企業はたくさんの知見を持っているはずです。つまりカタールという国は、日本人が想像する以上に、今でも様々な分野でビジネスチャンスが転がっている場所だと言えるでしょう」(同・佐々木氏)

註1:World Cup 2022: How has Qatar treated foreign workers?(BBC電子版:11月9日)

註2:英BBCはW杯開会式を放送せず カタールの人権侵害を問題視…世界各国から大ブーイング「屈辱にまみれたモーガン・フリーマンがキックオフ」(中日スポーツ電子版:11月21日)

デイリー新潮編集部

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