100億円をだまし取った「パクリ屋のドン」が急死 実の娘、親族が明かす素顔と「最期の言葉」
「石垣島へダイビングに連れて行ってくれた」
病魔に侵された武藤が最期に頼ったのは、今まで顧みてこなかった家族だった。
「物心ついた時から父の姿をあまり家で見ず、詐欺の世界でそこまで有名とは知りませんでした」
と明かすのは、武藤の一人娘である。
「父は大阪で整備工をしていた頃に母と知り合い、結婚後に父の親兄弟がいる香川に越して革鞄の製造会社を立ち上げました。その頃に両親は別居し、私と母は関西に引っ越してから交流を持ちませんでした。時折、テレビで父の逮捕映像が流れて、母と“あっ”と声が出て、近況を知るくらいでしたから……」
武藤の親族に聞くと、
「曾孫のことはよくかわいがり、ディズニーランドとか、去年の夏は石垣島へダイビングに連れて行ってくれた。“友人の関係で仕事をしている”“悪いことはしていないよ”と言っていたけど、結局はしていましたね。女性関係も派手だったけど、奥さんも昔かたぎの人で離婚はせず、それをいいことに幾度も金の無心をされていた。多い時は100万円とかね。詐欺をするための会社を作るのに必要だったんでしょう」
「オレが死んだら皆が喜ぶだろうな」
救急搬送された病室で、死を悟ったのか武藤はこんな話をしていたそうだ。
「直近の事件で逮捕された共犯者たちのことを名指しながら、“オレが死んだら皆が喜ぶだろうな。全部、オレが主犯ってことにすればいいもんな。やってもいないことはしっかり言いたいけど、それが心残りや”と呟いていたね」(同)
人を欺き続けた報いか、信頼できる仲間を持てず疑心暗鬼にとらわれていた希代の詐欺師。病床で家族らにみとられ旅立ったのが、せめてもの救いだったか。