妻の不倫を知り、36歳夫は“浅はかな方法”で復讐 「卑怯ね」と言い放たれたその後の夫婦関係は
乳飲み子を置いて外出していた妻
その後、紗依里さんは落ち着いて家事育児に専念しているように見えた。近所にやはり小さな子をもつ家庭が多い環境だったので、奏汰さんは帰宅すると、妻から「今日は公園に行ったの。向かいのマンションの人が仲良くしてくれた」など、いろいろ報告を受け、母の忠告などすっかり忘れた。
「ご近所さんともうまくやっているみたいだし、すっかり安心していたんです。ところが数ヶ月後、近所の奥さんに呼び止められた。『おたくの奥さん、しょっちゅう具合が悪いと言ってうちにお子さんを預けに来るんだけど大丈夫? ちゃんと病院で診てもらったほうがいいんじゃないかしら』って。その日は妻に言えなかったんですが、翌日、たまたま僕が発熱して会社を早退、帰宅すると妻がいない。生後8ヶ月の子はギャンギャン泣いている。おむつを取り替え、ミルクを与えるとようやく泣き止みました。妻が戻ってきたのは1時間後。子どもを置いてどこに行っていたんだ、と怒鳴ったらびっくりしたような顔をしていました」
ちょっと近くまでとぼそぼそ言っていたが、少なくとも1時間以上はいなかったのを奏汰さんは知っている。きちんと説明してほしいと言うと、彼女は泣きだした。
それからも紗依里さんはまったくその件を話すことはなかった。奏汰さんは子どものことが気にかかったので、しばらく母親に来てもらうことにした。それでもいいかと聞くと、紗依里さんは「どうぞ」と言った。
「どうぞってどういう意味だよとまた険悪になった。仕事をしたいなら保育園を探すよ、子どもとふたりで息がつまるなら、ときどき預けられる場所を探すよとこちらは言っているのに、妻は心ここにあらずという感じでした」
友人が告げた衝撃の過去
そんなとき、会社にかつて勤めていた女性が、子どもを保育園に預けることができたので契約社員として戻ってきた。彼女は、奏汰さんが紗依里さんとつきあう前に退職していたが、女子社員にあまり味方のいなかった中、紗依里さんと仲よくしていたはずだと奏汰さんは気づいた。
「彼女をランチに誘って、紗依里のことを尋ねてみたんです。『うまくいってないの? 気になってたんだけど』と彼女は意味ありげに言う。どういうことか聞くと、私の口からは言えないとずっと迷っていて……。あなたから聞いたとは言わない。このままだと僕らは離婚するしかないかもしれない。紗依里に何があったのか知りたいと必死に頼みました」
その結果、彼が聞き出したのは、紗依里さんは他部署の既婚男性とつきあっていたこと、奏汰さんと結婚してからもひとり暮らしのアパートを解約せず、その男性との関係が続いていたこと、そしてその後、転職した男性が数ヶ月前に亡くなったことなどだった。
「あまりのショックで、僕は呆然としたまま何も言えなかった。そのことは紗依里が彼女を信用して話したことで、たぶん他に誰も知らないと思うと彼女は言っていました。紗依里が僕と結婚するとき、あの男性とは切れたのかと聞いたら、もちろんと答えたけど、その後、アパートを解約せず、そこでときどき会っていると聞かされたとか。『あなたに言うべきだと思ったけど言えなかった』と謝られました」
娘は自分の子なんだろうか。奏汰さんはふとそう思ったという。目に入れても痛くない、この子のためなら自分の命も差し出せると思っていたが、他人の子でもそう思えるのか。頭がおかしくなりそうだったと、奏汰さんは顔を歪めた。
相手が生きているなら怒鳴り込むこともできるが、亡くなっているのだからそれもできない。ショックを受けている妻を責めることもできない。自分だけがどうしてこんなに苦しまなければいけないのか。奏汰さんはつらくてたまらなかった。いっそ全部、妻にぶちまけて離婚すればいいのだとは思ったが、そうまでされても妻のことは憎めなかった。
[2/5ページ]