香川照之、ENEOS会長はどこでミスを犯したのか 危機管理のプロは「謝罪」の問題点を指摘

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クロの人は無罪を…

Q7.不祥事などの調査を適正に行うためのノウハウはあるか。

 組織が社員などの不祥事の調査をする際には、「クロの人は無罪を主張しようとするが、シロの人は無実を主張する」という定理を知っていると便利です。自民党の議員でも「旧統一教会の関連団体とは知らなかった」などと言った人は、無罪を主張しているに過ぎません。

 他方、「クロの人は言葉でクロを否定しようとするが、シロの人は証拠でシロを証明しようとする」という定理も役立つでしょう。山際大臣のように「記憶も資料も無い」なんて言う人は、多くの場合はクロと判定して構わないのです。

 危機管理の最初のステップは「感知」ですから、危機を敏感に感じ取って、真実を正確に知る必要があります。そのためにも、この二つの定理は是非覚えておいていただきたいものです。賢明なる読者の方々が“危機管理の落第生”になって格差のドン底に沈まないよう願っています。

「危機管理格差」の時代の勝ち組になるために

 さらに細かくリスク管理のノウハウを知りたい方は拙著『その対応では会社が傾く―プロが教える危機管理教室―』をご高覧ください。弊社が出版したものも含め、これまで書店に並んだ危機管理に関する書籍の多くは、失敗事例を分析して正しい対応を解説する、いわば結果論、すなわち後講釈のものが大半でした。その結果、読者に「やはり危機管理は難しい」「自分も同じ轍を踏むのではないか」という恐怖感を与えてきたように思います。そこで本書は、危機対応に失敗してしまうプロセスと、そこから軌道修正するプロセスに焦点を当ててみました。危機に遭遇した組織や人々がどのような心理に陥って、どのような議論を経て間違った方向に進んでいくのか。そして、どんな助っ人や助言が窮地から救ってくれるのかを描いて、読者に安堵感をもたらす工夫をしてみました。

 読みやすくするために、大学のゼミナール授業の形式をとっていますが、実はこれ、弊社が行ってきた実際のコンサルティングの場面をリメークしたものです。それぞれに個性を持った4人の学生を動物にして登場させていますが、企業の中にいる典型的な人物像を選んであります。利口なタヌキ、要領の良いウサギ、勝気なキツネ、マイペースのカメ、というキャラクターです。そこに冷静沈着な教授と経験豊富な顧問が加わって、危機対応の議論を深めていきます。

 また、無数に存在する危機管理のノウハウを、整理と分類することによって、理解と記憶を促進できる理論(方程式・定理)にし、多くを紹介しています。前述したように、基本的な危機管理の方程式は、「感知・解析・解毒・再生」という四つのステップ。定理としては、「人は二つのトウソウ本能に支配されやすい」。加えて「真実は水平・垂直に調べないと見えない」という定理も重要です。読者の皆さんが、失敗してしまうプロセスと軌道を修正するプロセスを知って、理論によって危機を克服されることを祈念しております。ぜひ「危機管理格差」の時代の勝ち組になってください。

田中優介(たなかゆうすけ)
(株)リスク・ヘッジ代表。1987(昭和62)年東京都生まれ。企業の危機管理コンサルタント。明治大学法学部卒業後、セイコーウオッチ株式会社入社。お客様相談室、広報部などに勤務後、2014年株式会社リスク・ヘッジ入社。現在、同社代表取締役社長。岐阜女子大学特任准教授。

週刊新潮 2022年11月17日号掲載

特集「『香川照之』『ENEOS会長』はどこでどう間違ったか 『危機管理格差』の時代に“勝ち組”と“負け組”を分けるもの」より

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