香川照之、ENEOS会長はどこでミスを犯したのか 危機管理のプロは「謝罪」の問題点を指摘
「対岸の火事」と捉えない
Q6.危機管理を成功させる秘訣(ひけつ)はあるのか。
それでは、危機管理を成功させるためには、どうすればよいのでしょうか。
まず、危機管理の定理や方程式といった理論を習得しなければなりません。次に、他者の事例を疑似体験して修練を積むことが大切です。自分が、旧統一教会との深い関係が露見した萩生田光一・政調会長や山際大志郎・経済再生担当大臣だったら、どんな理論に沿って、どのような言動をするかを考えてみるのです。
また、自分が日野自動車の社長なら、どのようにデータ不正の実態を全て調べ上げるのかをロールプレイしてみるのもよいでしょう。決して「対岸の火事」と捉えないでください。
他にも、自分が川崎幼稚園の保育士だったら、どのような再発防止策を発表するのかを想像してみるのです。ちなみに、再発防止策は「フールプルーフとフェイルセーフで施す」という方程式に沿って考えてみてください。
人間はミスするという前提で設計する
「フールプルーフ」とは「どんな愚か者でも耐えうる」という意味。「人間は誤る」という前提に立ち、コンピューターのシステムや機器の取り扱い方で人がミスを犯しても、利用者や周囲を危険にさらしたり、致命的な損害を生じさせないような安全な設計にすることを指します。たとえば、プレス機械や断裁機などで両側に離れたボタンを両手で同時に押さないと作動しないようにし、作業者の指が機械に巻き込まれて大ケガに至ることを防ぐ設計などが挙げられます。
「フェイルセーフ」の考え方も、機器の故障や誤作動は起きるものとの前提で、それでも安全な状態にもっていける仕組みに設計するとの発想です。
園児に防犯ブザーを持たせたり、バスのクラクションを鳴らす訓練などでは不十分だからです。米国のスクールバスのように、エンジンを止めると自動的にブザーが鳴って、最後尾に設置されたボタンを押さないと音が止まらない仕組みにする。すなわち、どんな愚かな運転手でも園児の置き去りを防げるようにすべきなのです。
また、バスの天井に人感センサーを設置して、誰も居ないはずの時間に人の動きを感知したら複数の保育士のスマホにメールが届く仕組みにする。つまり、たとえ置き去り事案が起きたとしても、すぐに対応できるようにすべきなのです。
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