香川照之、ENEOS会長はどこでミスを犯したのか 危機管理のプロは「謝罪」の問題点を指摘
香川照之「謝罪」の問題点
Q5.香川照之は何を間違ったのか。
銀座のクラブでの性加害トラブルが発覚した香川照之氏の場合は、まず「感知」、そして「解析」に失敗したのだと思います。「これは極めて深刻な事案だ」と感じなかったので、すぐに自身がMCを務めていた情報番組「THE TIME,」(TBS系)の降板を表明しませんでした。そして、マスコミの取材を拒否したら続報を書かれる展開を予測できなかったのでしょう。その結果、続報で“お店のママの髪をつかんでほくそ笑む”おぞましい写真が掲載されて命取りとなったのです。
また、「解毒」も不十分と言わざるを得ませんでした。謝罪の言葉は「お騒がせして申し訳ない」というもので、どこか罪の認識が甘い印象を与えます。
「お騒がせし」は、事態の発覚をわびているに過ぎず、発生させたことをわびていることにはなりません。同時に、謝罪の方法にも問題がありました。自らが出演していた「THE TIME,」の中で謝罪を行い、マスコミからの質問を受ける時間を設けなかった、いわゆる「時間不足の謝罪」にしてしまったのです。マスコミにも読者、視聴者にも、聞きたい言葉を聞けない不満を鬱積させてしまったというわけです。
さらに、「再生」すなわち信頼回復に向けて何をしていくかも、具体的に表明しませんでした。「危機管理の方程式」から全く外れた対応をしたと私は見ています。大失敗への道をたどる、教訓とすべき事例と評価できましょう。
「逃走本能」に支配された典型例
財界で要職を務めていたENEOSの杉森務会長も香川氏同様に、夜のお店でのセクハラ行為が原因で辞任しました。当初は「一身上の都合」としか発表せず、詳しい事情を明かしませんでしたが、この隠蔽(いんぺい)された事実も週刊新潮の報道によって明るみに出されました。
それによれば、強制ワイセツとされてもおかしくない性加害だけではなく、女性に肋骨骨折などのケガまでさせていて、傷害などで刑事事件に発展しかねないほどのひどい事案でした。これなども「逃走本能」に支配された典型例で、真実を隠して逃げ切りたい、公的な釈明、説明から逃れたいという思いに陥ってしまった。これでは「解毒」にはほど遠いと言わざるを得ません。結果的に、石油業界のトップ企業でありながら、現在、水素などの次世代エネルギーへの転換も模索し、脱炭素でSDGsへ取り組むクリーンな姿勢を社会にアピールしたいと考える同社のイメージに、取り返しのつかないほどの大打撃を与えました。
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