香川照之、ENEOS会長はどこでミスを犯したのか 危機管理のプロは「謝罪」の問題点を指摘

国内 社会

  • ブックマーク

「香川照之」「山際前大臣」はどこでどう間違えたのか。リスク管理で時代遅れの政界、芸能界。一方、財界では危機管理の勝ち組・負け組の差が鮮明になってきているという。どうすれば敗者にならずに済むのか。プロが指南する「危機管理格差」の時代の生き残り策。【田中優介(株)リスク・ヘッジ代表】

 ***

〈女性蔑視発言で辞任したオリンピック組織委員会の森喜朗前会長、旧統一教会問題で岸田政権の支持率を暴落させた萩生田光一・自民党政調会長に、山際大志郎・経済再生担当大臣(当時)。あるいは、銀座ホステスへの性加害が発覚した俳優の香川照之氏や、園児をバスに置き去りにして死亡させた静岡県の川崎幼稚園の園長――。彼らの危機対応の際の言動には耳を疑い、目を覆いたくなるものがある。これらを危機管理の専門家はどう見ているのか。

 ご登場いただくのは株式会社リスク・ヘッジ代表の田中優介氏。10月15日に上梓した最新作『その対応では会社が傾く―プロが教える危機管理教室―』(新潮新書)は、八重洲ブックセンターのベストセラーランキング(10月16日~22日)で8位に入るなど、話題を呼んでいる。田中氏は七つの設問を立て、以下のように問題点を指摘、対処法について解説する。〉

20年以上は遅れている

Q1.政治家や芸能人の危機管理の現状をどう考えているか。

 常々申し上げていることですが、政界・芸能界・教育界・スポーツ界は危機管理が時代遅れになっています。理論に基づかずに感情的で場当たり的な危機対応をしてしまうからです。これは2000年ごろの財界と同じ水準であり、20年以上は遅れていると言わざるを得ません。いわば“危機管理の落第生”という状態です。

Q2.では、財界は危機管理を上手く行えているのか。

 2000年前後には、財界でもあきれた言動が多く見られました。三菱自動車が顧客クレームの書類をロッカーに詰め込んで“リコール隠し”をしたり、食中毒を起こした雪印の社長が「私は寝ていないんだ!」と取材に訪れた新聞記者に叫んだこともありました。

 しかし、昨今の大企業は、概ね適切な危機対応をするようになっています。

 今年7月に大規模な通信障害を起こしたKDDIや、9月に約13万人の顧客情報を流出させたニトリなどは、その対応についてマスメディアやインターネットで厳しい批判の声は見当たりません。アウトドア用品メーカー・スノーピークの女性社長が、既婚男性との交際と妊娠を理由として、表沙汰になる前に辞任した事例も賢明な選択だったと思います。

次ページ:企業ごとに「格差」が明確

前へ 1 2 3 4 5 次へ

[1/5ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。