大谷翔平「WBC」さえ“踏み台”? 「MVP」も眼中にない理由

スポーツ 野球

  • ブックマーク

“無冠”は織り込み済み

 本人も想定内の落選ではなかったか。MLBでは11月17日(日本時間同18日)に今季の最優秀選手(MVP)が発表され、ア・リーグはエンゼルスの大谷翔平(28)がヤンキースのアーロン・ジャッジに大差をつけられての2位で、2年連続の栄誉を逃した。「15勝、34本塁打」でベーブ・ルース以来、104年ぶりの「2桁勝利、2桁本塁打」をマークしながらも、リーグ新記録の62本塁打を放ったジャッジに及ばなかった。【木嶋昇/野球ジャーナリスト】

 MLB担当記者はこう語る。

「大谷は事前にMVP受賞がないことを察していたに違いない。10月中旬の帰国時には羽田空港で異例の取材対応をしたが、これが今オフ最後のメディア露出になるのではないかとみられていた。昨年はMVP発表直前に日本記者クラブで会見し、これをもって各社が個別に要望していたインタビュー取材は全てなくなった。今年も各社が同様に申請したが、帰国時の取材対応がその代わりという理由で、最近になって大谷サイドから断りが入った。MVPの受賞がないのでメディア対応は最低限にし、トレーニングに専念したいのだと思う。『野球サイボーグ』の異名通りで、来季はさらに進化した姿を見せるのではないかと思わせている」

 大谷はこのオフも都内のマンションからの外出は、ジムなどトレーニング施設の往復がほとんどで、野球漬けの日々を送っているという。

「メジャーでは回転数、回転軸などをインプットし、相手投手の球筋を完全に再現する新たな打撃マシンが開発されるなど、技術革新は日進月歩で、大谷は毎年同じことをしていては好成績を残せないと思っている。敵チームの研究を上回る成長をしようと、オフも毎日が勝負と位置付けている」(同)

 昨季はシルバースラッガー賞、エドガー・マルティネス賞などを総なめにした。だが、今季はここまで主要な賞に縁がなく、無冠に終わる可能性さえある。しかし、それも大谷には織り込み済みのようで、とっくにその目は来季に向いており、今季終盤には投打で布石を打っている。

サイ・ヤング賞より打撃タイトル?

 打撃では30本塁打を到達した頃から、確実性を高める打法に着手した。その結果、本塁打は減ったものの自己最高の18試合連続安打を放つなどし、最終的に2割7分3厘の打率をマークした。低反発球に入れ替わり、MLB全体で減った本塁打に関しては、自身のフィジカルの強化が不十分だったと自己分析済みだ。

「今季の課題を踏まえ、このオフにウエイトトレーニングでパワーアップしてくるのではないか。20年オフも筋力強化に力を入れ、見違えるような肉体でキャンプインした。(エンゼルスのジョー・)マドン前監督は『フィジカルの化け物』と表現した。かつて大谷と自主トレーニングをともにしたダルビッシュ(有=パドレス)も羨んだフィジカルがさらに強くなり、(今季終盤に見せた)確実性を両立させれば21年のようにホームラン王を狙える」(元NPB球団監督)

 投手では8月中旬、新球のツーシームを本格導入した。160キロ超の球速で右打者の内角へ沈む変化球を、ブルペンで練習しただけでいきなり試合に使った。これで今季、主武器にしたベースの端から端まで曲がるスライダーがより生きるようになった。1試合当たりの奪三振率はア・リーグトップの11.87と驚異的な数値を記録。サイ・ヤング賞でも初めて得票し、4位に食い込んだ。来季以降の受賞も夢ではないのだが……。

次ページ:WBCではリリーフ登板も

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。