ヘルソン解放でもゼレンスキー大統領を待ち受ける3つの難題

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攻守逆転

 アメリカも一枚岩でまとまっているわけではない。共和党下院議員のケビン・マッカーシー氏(57)は、次期下院議長が確実視されている有力議員だ。

 マッカーシー氏は10月18日、「米国は景気後退の最中にある。ウクライナは重要だ。だが、その支援だけをしていればいいわけではない。白紙の小切手はありえない」(註)と発言し大きな注目を集めた。

「第2点の難題は、ロシア軍が退却してドニエプル川を渡ったことです。自ら橋を壊したので、ロシア軍がヘルソン市を再攻撃しないこと、そしてウクライナ軍を迎え撃つ戦術に転じたことは明らかです。一方のウクライナ軍は渡河作戦を実施しない限りロシア軍を撃滅できないわけですが、この作戦は簡単には成功しません」(同・軍事ジャーナリスト)

 一般に「攻めるには守るより4倍の兵力が必要」と言われている。緒戦で攻めるロシア軍は戦力を分散させてしまい、守るウクライナ軍の返り討ちにあった。

 ところがドニエプル川を渡るとなると、ウクライナ軍とロシア軍の攻守が逆転してしまう。今度はウクライナ軍が4倍の兵力でロシア軍に襲いかかる必要がある。

渡河作戦の怖さ

「そもそもウクライナは人口約4300万人の小国です。更にウクライナ軍の損害は全く報道されていません。果たしてドニエプル川の東岸に陣を敷いたロシア軍を圧倒するだけの戦力を確保できるか、それは未知数です」(同・軍事ジャーナリスト)

 過去の戦史を紐解いても、渡河作戦に失敗した軍は枚挙に暇がないという。

「軍隊が川を渡るというのは極めてリスクが高い。ウクライナ軍が安易に実施すると、ロシア軍の返り討ちにあう可能性も否定できません」(同・軍事ジャーナリスト)

 もちろん渡河作戦を実施するにあたり、NATO加盟国が惜しげもなく上陸用舟艇や戦車、爆撃機を供与すれば、話は全く違ってくる。

「しかしNATO加盟国は、“過剰”な戦力を供与してロシアが大敗北すれば核兵器の使用に踏み切るのではないかと恐れてきました。これまで兵器供与がいかに小出しに行われてきたか、世界各国のメディアが詳報しています。最近の“支援疲れ”と相まって、ドニエプル川渡河作戦に大規模な軍事支援を行うとは考えにくいのです」(同・軍事ジャーナリスト)

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