習近平も乗らなかったインドネシアの高速鉄道、“中国製”の安全性に懸念? 日本に再び秋波を送るが
膨らむ経費で政府が国費を投入
特に難題だったのが建設費だ。計画が遅延する過程で当初予算の60億7000万ドル(約9313億円)は膨らみ続け、最終的に79億ドル(約1兆1030億円)になり、中国の追加支援を求めても不足する事態に。インドネシア政府は今年3月、約357億円相当の国費投入を決断。「自分の懐を痛めずに完成する」と見込んでいた目論見が崩れわけだ。
しかし、国費を投入しても建設費は不足しており、インドネシア政府は中国に再び追加支援を求める厳しい財政状況が続いている。
再び日本に秋波を送るも…
「恥も外聞」もなくなったインドネシア政府が目をつけたのが日本である。現在、日本が進めるジャカルタから東ジャワ州の州都スラバヤまでを結ぶ在来線の高速化計画を利用し、バンドンから高速鉄道を延伸するかたちで北部海岸線と結ぶ計画を立て、日本の協力を求める方針をジョコ・ウィドド大統領が示したのだ。
しかし、高速鉄道計画の受注をめぐって屈辱的な扱いを受けた日本は、インドネシア側の「勝手な提案」をこれまでのところ断り続けている。
一応、無理な理由としては①在来線は狭軌(レールの幅が狭い)で高速鉄道は広軌という違い、②延伸するにしてもトンネルや橋梁などの安全基準が日本と中国では異なる、③在来線のルート変更が必要になる、といった点を挙げている。
こうなるとジョコ・ウィドド大統領としては、G20の機会を利用して習近平国家主席と共に高速鉄道に試乗し、内外にアピールするしかない。
同乗計画は中国側の確実な合意もないまま、インドネシア国内で期待が膨らんでいた。だが10月末には、ルフット・パンジャイタン調整相(海事・投資)が「両首脳はバリ島からオンラインで高速鉄道の建設進捗状況や試験走行などを視察することになるだろう」という軌道修正を示唆していた。
そして試乗がキャンセルとなり、インドネシア政府は慌てふためいた。試運転の様子などを習近平国家主席とジョコ・ウィドド大統領がオンラインで視察することを取り付け、なんとかメンツを保ったのだった。
[2/4ページ]