リブゴルフ 来年の目玉は「チ―ムのフランチャイズ化」 既存ツアーと共存する方法はあるか

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斬新な手法が好評

 選手たちに独自のビジネスを行なわせるというリブゴルフの手法は、これまでのプロゴルフ界では見られなかった新しい試みだ。プレー以外のことには不慣れなはずの選手たちは、最初は戸惑うことだろう。

 だが、収益が自身の懐に入るとなれば、選手たちのモチベーションはそれなりに高まるかもしれない。ゴルフをすること、試合でプレーをすることが仕事のプロゴルファーに「プレー以外の商売もしてね」と求めることへの是非は、もちろん取り沙汰されるだろう。しかし、「それがリブゴルフというもの」と割り切ることで、選手たちには受け入れられそうに感じられる。

 そして、従来のプロゴルフ界にはなかった斬新な手法を考案し、実施することが、リブゴルフの存在価値の一つだと考えれば、「なるほど」と頷ける。

 実際、その斬新さは、従来のプロゴルフ界にさほど馴染みがなかったヤング層やゴルフ初心者、これまでゴルフに縁がなかった人々には、すでに評価を得ている様子なのだ。今年の全8試合における入場チケット購入者の41%が45歳以下のヤング層で、そのうちの半数はパートナーや家族を同伴して来場。その多くが「ゴルフ観戦は生まれて初めて」「ゴルフは一度もやったことがない」という人々だったそうだ。

 ゴルフの試合会場に初めて足を踏み入れた人々は、バンド演奏や噴水、花火といった賑やかな演出や様々なギャラリー・サービスに「大いに満足した」「とても楽しかった」と好意的な印象を抱き、「また観戦したい」と笑顔を輝かせていたという。

「ビッグマネー頼みの金満ツアー」といった批判や、予選落ちのない3日間54ホールという形式の是非、サウジアラビアに対する意見や見方等々はさておき、ゴルフと縁遠かった人々の心を捉え、即座にリピーター化したことは、リブゴルフが収めた成功と呼ぶべきなのだろう。

既存ツアーとの対立は

 リブゴルフが従来のゴルフ界の既成概念に捉われず、柔軟な思考で斬新なアイディアを生み出し、エンターテインメント性の高いプロゴルフの舞台を創出していることは、徐々に実証されつつある。フランチャイズ化も含め、自由競争の原理を取り入れようとしているところには大いに好奇心を煽られる。

 しかし、予選落ちがないのに高額賞金がギャランティ(保証)されている点や、ツアーや大会への参加資格やその決め方に透明性、オープン性が感じられないところには依然として違和感がある。

 とはいえ、サウジアラビアの政府系ファンドからの支援を受け、潤沢なオイルマネーを存分に注ぐことができる限りは、そのマネーパワーを生かしてトッププレーヤーや人気選手を確保していくことだろう。そうすることで、結果的に大勢のギャラリーを引き付けることも可能になるはずである。

 本来なら、そうやって独自の手法で独自のツアーを運営していくこと自体は、何の問題もないはずである。PGAツアーやDPワールドツアーとは無関係に、リブゴルフがひたすら独自路線を歩むのであれば、対立は起こらなかったであろう。

 しかし、リブゴルフが既存のツアーに挑戦状を叩きつけるような形で大事な選手たちを奪ったことが対立の端緒となった。そして、ビッグマネーを得ることを自ら選んでリブゴルフへ移籍した選手たちが、破格のお金を得る代わりに捨てたはずのものを、「やっぱり欲しい」と言い始め、挙句に「もらう権利がある」と主張し始めたことが、対立と喧噪に拍車をかけている。

 自ら去ったツアーの出場資格を求め、世界ランキングのポイントを求め、メジャー大会への出場資格を求め続けているリブゴルフ選手たちの言動は、傍から見れば身勝手な姿にしか映らない。だが、もしも今後、リブゴルフが独自路線だけを粛々と歩むとしたら、PGAツアーやDPワールドツアーとの対立や確執は大幅に解消されるのではないだろうか。

 PGAツアーには歴史の重みと信頼と、ピラミッド型に積み上げてきた厚い層があり、予選通過を目指して戦う4日間72ホールのトラディショナルなゴルフがある。

 リブゴルフには歴史はなく、信頼もまだ築けてはいないが、高いエンターテインメント性があり、選手たちが独自に運営するフランチャイズに象徴される斬新さもある。

 心情的にこじれ、もはや協調路線を歩むことが難しいのだとしても、リブゴルフと既存ツアーは「まったく異質の別物」と割り切ることはできるはずだ。これからは両者とも、争いのために注いできたエネルギーを自分たちのために注ぐべきではないだろうか。

舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS タイガー・ウッズ 復活の言霊』(徳間書店)が好評発売中。

デイリー新潮編集部

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