ツナ缶に虫混入で「1億円」賠償命令 裁判資料で明らかになった騒動発覚の真相、直営工場でもゴキブリ混入、判決文を閲覧禁止の怪
デイリー新潮が11月11日に報じた、大手加工食品メーカー「はごろもフーズ」と、その下請け企業である「興津食品」との間で争われている訴訟の舞台がいよいよ控訴審へと移る。興津食品は17日にも控訴を申し立てる予定で、高裁でも全面的に争う構えだ。そんななか、入手した裁判資料を仔細に検証すると、騒動の背景にひそむ驚きの事実が浮かび上がった。
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はごろもフーズが製造依頼したツナ缶に“ゴキブリと見られる虫が混入していたことでブランドイメージが傷つけられた”として、製造元の興津食品に約8億9700万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が11月8日にあった。
静岡地裁は興津食品に対し約1億3000万円の支払いを命じたが、その詳細はいまだ明らかになっていない。なぜなら判決文を含めた裁判資料の一部は現在、はごろもフーズ側が閲覧制限を申し立てたことで、第三者などは見ることができないためだ。
興津食品側の代理人弁護士を務める増田英行氏がこう話す。
「“勝訴”でありながら閲覧制限を申し立てた真意は測りかねますが、私たちとしては制限が解除され、多くの人に事実関係が検証されることを望んでいます」
今回、すべてではないものの、主だった裁判資料の一部を入手。読み進めていくと、騒動の裏側にある新事実が明らかになった。
「開封後に混入の可能性も」
発端は2016年10月13日、山梨県内のスーパーで「シーチキンLフレーク」を購入した客から「ゴキブリのような小さな虫が混入していた」とスーパー側に苦情が入ったことだった。同商品は興津食品の工場で製造されたもので、この時はスーパー側から連絡を受けた「はごろもフーズ」の担当者が購入者に直接謝罪するなどして、問題は解決したと見られていた。
しかし2週間ほど経った頃、“ツナ缶にゴキブリ混入”と地元メディアが報じたことで事態は一変する。なぜ当事者間で解決していたはずの混入事故がタイムラグを経てニュースとして取り上げられ、「問題」が再燃することになったのか。
裁判資料には当のスーパー関係者の陳述書もあり、こう経緯が記されている。
購入客からの苦情を受けた13日、スーパー側は衛生管理の専門家として顧問契約している保健所職員OBの協力を仰ぎ、すぐに混入缶を検分。顧問はゴキブリと見られる死骸の変容の様子などから「製造過程で入ったものに間違いない」と指摘し、半日程度で結果が出るカタラーゼ検査を促した。
しかし同日夕、スーパーを訪れたはごろもフーズ担当者は「開封後に混入した可能性は否定できない」と話し、検査のために問題のツナ缶を持ち帰ったという。数日経っても一向に検査結果に関する報告がないため、スーパー側が“どうなっているのか?”と同社に確認の電話を入れた翌18日、担当者が再訪。騒動の芽はこの時に生まれたと読み取れる。
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