「出産準備金」新設は効果なし! 結婚、子育てが損になる国・日本…欧米との違いを専門家が解説
多く育てた方が得をするシステム
更に、成人すれば経済的に独立するのが当然ということは、親の方も、成人すれば子育ては終了ということなのである。西ヨーロッパでは、公立大学は自国民であればほぼ無料である。アメリカやイギリスでは、大学に行くなら自分でバイトしてお金をため、更に、学生ローンを組むのが一般的である。親が大学の学費を負担することはほとんどないから、何人産んでもお金の負担はそれほど気にならない。西ヨーロッパでは、児童手当等があるから、むしろ多く育てた方が得するくらいである。また、欧米では、塾など学校外の教育費もほとんどかからない。
1人当たりにかけるお金を増やす日本では…
しかし、日本を含め、東アジア諸国は違う。韓国、中国、台湾、シンガポールでも、親が高額の学費を負担するだけでなく、受験競争が激しいので、学校外の教育費がかかる。そうしないと自分の子どもだけ不利になってしまい、親心として忍びない。だから親は子どもを持つときに、進学費用を含めた長期的負担を考えざるを得ない。そう思うと、子どもの数を絞って1人当たりにかけるお金を増やす。それだけでなく、子どもを豊かな環境で育てられないとなれば、子どもを産まない、いや、そもそも結婚しないという選択が取られる。
そのため、東アジア諸国では、進学率が上昇するにつれて、極度の少子化に直面するのである。今や韓国に至っては、昨年の合計特殊出生率(簡単にいえば、女性1人当たりが産む平均の子ども数)は、0.8と1を切っているのである(日本は1.30)。おそらく、日本以上に子どもにお金をかけなければいけないという意識が強いのだと思われる。
子どものことを考えなくても、親との同居は、結婚のハードルが高くなる。親と同居している限り、それなりの生活を送ることができる。物わかりがよい親は、大人になった息子や娘の自由を制限することはないし、母親は家事をしてくれるだろう。しかし、結婚して新しい生活を始めるとなると、たとえ夫婦共働きだとしても、経済的に苦しくなるし、なにより家事を自分たちでする必要がある。これでは、ある程度の生活条件をクリアしないと、なかなか結婚して新しい生活を始める動機づけにならない。
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