「出産準備金」新設は効果なし! 結婚、子育てが損になる国・日本…欧米との違いを専門家が解説

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世界でも最も高齢者の比率が高い

 読者の中には高齢者、後期高齢者に向かう方が多いと思うが、今後の高齢者の生活にも大きな影響を及ぼす。それは、「お金」の面と「ケア(介護)」の面である。

 ご存じのように、日本は世界の中で高齢者の比率が最も高く、2021年で29.1%。人数も3640万人、もう10人に3人が65歳以上で、2位イタリアの23.6%を大きく引き離している。これだけの人が年金を受給しているのである。現役世代がこれから縮小するので、年金制度は維持されるにしろ、もらえる年金額が減少することは確実である。貯金に余裕がある高齢者を除けば、高齢者が実質的に使えるお金が徐々に減っていく。

富裕層以外が受けるケアの質が低下

 そして、高齢化が進めば介護需要も増える。今でも介護職員は不足している。先日公表された令和4年版厚生労働白書では、団塊の世代が徐々に後期高齢者(75歳以上)に突入していく。その結果、2040年には医療福祉労働者100万人近くの不足が見込まれることが示された。少子化により、労働力が減少する中、高齢化が進むからである。不足するといっても要介護者を放置するわけにはいくまい。

 となると、公的介護水準を引き下げる以外に手はない。要介護度が低い高齢者は、介護ヘルパーが3日に1度来てくれていたのが1週間に1度になるという具合である。自費でヘルパー等を雇える富裕層を除いて、介護状態になったとき受けられるケアの質は徐々に低下する。

 年金も介護も「徐々に」というのがくせ者で、知らず知らずのうちに、国民は、高齢期の生活水準の低下を受け入れざるを得ないようになっていくのだ。

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