北朝鮮ミサイル 日本にとって最大の脅威はダム湖の水中発射場から打ち上げられたKN-23

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ダム湖発射の衝撃

 SLBMは高圧ガスの力で海中から空中に打ち上げられる。その後、失速直前にロケットに点火されて飛翔する。軍事・偵察衛星で熱源をキャッチすることは難しい。

「短い射程距離も、迎撃という視点から見れば大きな利点になります。ICBMのように放物線を描く必要はありません。低高度を飛び、あっという間に着弾します。最新鋭の防空システムであっても、迎撃は非常に困難なのです」(同・軍事ジャーナリスト)

 しかしながら、軍事の専門家でさえ「北朝鮮がSLBMを持っていても、それほどの脅威にはならない」と考えていた。SLBMが威力を発揮するには、原潜への搭載が不可欠だからだ。

 もちろん北朝鮮は原潜を保有していない。そんな国がSLBMを何発持っていようが意味がない──そうした“常識”を北朝鮮はひっくり返してしまったのだという。

「9月25日、北朝鮮はSLBMを発射しました。なんと発射場所は、ダム湖の水中発射場との発表でした。その証拠として、ロシアの短距離弾道ミサイル『イスカンデル』を北朝鮮が改良した『KN-23』が、ダム湖の中から空に向かって飛び出す写真も公開されたのです」(同・軍事ジャーナリスト)

 ダム湖の中にある水中発射場から打ち上げられるのだから、メリットは原潜と全く変わらない。発射の端緒をキャッチされる可能性は低下し、迎撃されにくくなるという利点は増す。

ノドンとテポドン

「KN-23の射程距離は最大で600キロから650キロだとされています。今の段階で韓国全土が射程距離に入っていますし、北朝鮮は更に距離を伸ばそうと改良を重ねています。もし700キロ台が現実のものになると、アメリカ海軍の基地がある長崎県佐世保市や、海兵隊の基地がある山口県岩国市が射程距離に入ります」(同・軍事ジャーナリスト)

 ちなみにジュネーブ条約は、戦争であってもダムなど重要な社会的インフラに対する攻撃を禁止している。もちろん無視することは可能だが、国際法の遵守を謳うアメリカや日本にとって厄介な問題であることは事実だ。

「いずれにしても、ダム湖から発射したミサイルで日本本土も攻撃できる可能性が出てきているわけです。これが日米の安保戦略にとって重大な脅威となるのは言うまでもありません」(同・軍事ジャーナリスト)

 1990年代にはノドン、2000年代にはテポドンが、日本にとって脅威だと連日のように報道されていた。だが、それは少し大げさだったようだ。

「ノドンもテポドンも制御が簡単な液体燃料を使っていました。液体燃料は注入の時点で軍事・偵察衛星がキャッチできます。理論上は先制攻撃で破壊することも可能でした。それから約20年が経ち、北朝鮮は制御が難しい固体燃料による弾道ミサイルを当たり前のように発射しています。開発技術と発射ノウハウの蓄積は、中国軍を超えているかもしれません。気がつけば北朝鮮はアジア有数のミサイル保有国になってしまったのです」(同・軍事ジャーナリスト)

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