北朝鮮ミサイル 日本にとって最大の脅威はダム湖の水中発射場から打ち上げられたKN-23

国際 韓国・北朝鮮

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無言の圧力

 ミサイルのバリエーションが豊富という特徴も重要だという。例えば11月3日、日本は文化の日で祝日だったが、早朝に北朝鮮がミサイルを発射したことでJアラートが発出。日本各地で混乱が起きたことは記憶に新しい。

「11月3日には少なくとも3発のミサイルが発射されました。そのうちの1発はICBM(大陸間弾道ミサイル)の『火星17型』の可能性が高いと分析されています。更に、防衛省の公式サイトにある『発射事案』は弾道ミサイル限定なのでアーカイブ化されていませんが、北朝鮮は10月12日、低空を飛ぶ長距離戦略巡航ミサイル2発を試験発射したと発表しているのです」(同・軍事ジャーナリスト)

 あくまで北朝鮮の“大本営発表”ではあるが、朝鮮中央通信は《ミサイルは黄海の上空を楕円や8の字形の軌道で2時間50分34秒飛行》し、《「2000キロ・メートル先の標的に命中した」と伝えた》という(註2)。

「早朝や夜中の発射もありました。10月6日には首都・平壌(ピョンヤン)の三石(サムソク)地区から発射しましたが、韓国軍は『これまでミサイルの発射に使われたことのない場所』と発表しています(註3)。つまり北朝鮮は『我々は、いつでも、どこからでも、様々な種類のミサイルを発射することができるぞ』と、韓日米の3国に対して無言の圧力を強めているわけです」(同・軍事ジャーナリスト)

SLBMの脅威

 防衛省が5月7日に発表した広報資料には、とても興味深い記述があるという。専門家が資料を読めば、北朝鮮のミサイル開発が非常に独創的であり、日韓米にとって脅威になり得ることが浮かび上がるというのだ。まずは引用してみよう。

《発射されたのは、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)と推定され、最高高度約50km程度で、約600km程度飛翔し、朝鮮半島東側の日本海に落下したものと推定されます》

 ここでSLBMというミサイルの特徴を見てみたい。文字通り潜水艦に搭載されるミサイルなのだが、そのことでどんなメリットが生じるのだろうか。

「ICBMは大型のため、以前は『サイロ』と呼ばれる地下の発射基地に格納されるのが一般的でした。東西冷戦下の軍拡競争では、アメリカもソ連もサイロ建設に励みました。ところが軍事・偵察衛星の能力が飛躍的に高まったことから、ICBMを中心とする核戦略は大きな変更を迫られることになったのです」(同・軍事ジャーナリスト)

 敵国がミサイルを発射する兆候をできるだけ早い段階でキャッチすれば、防御の方策は飛躍的に増える。そのため核戦略では“レスポンスタイム”が非常に重要視される。

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