米国有権者の4割超が「連邦政府は秘密結社に操られている」と考えるのはなぜか
11月8日、米国の中間選挙が行われた。現在、連邦議会の上下院ともに民主党が多数を占めているが、下院は野党・共和党が4年ぶりに多数派を奪還する公算が高い。上院では激戦となっており、最終結果が確定するのは12月を待たなければならない。
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今回の中間選挙がかつてないほど世間の耳目を集めたのは、世界最初の代議制民主主義国を自負する米国で選挙制度に対する信頼が大きく揺らいでいるからだ。
2020年の大統領選挙の結果を認めない「選挙否定派」の立候補者が300人近くに上っており、自らの正統性を否定された形のバイデン大統領は「民主主義の危機だ」と猛反発していた。
今回の選挙でも出口調査で「共和党優勢」が伝えられたのにもかかわらず、「赤い波(シンボルカラーが赤である共和党の圧勝)」が起きなかったことから、トランプ前大統領が激怒したと米CNNは報じている。共和党支持者の間でますます選挙制度に対する不信感が高まることになるだろう。
米国社会の分断が今後長期にわたって続くことが懸念される中、筆者が注目したのは10月下旬に実施された世論調査の結果だ。
44%が「連邦政府は秘密結社に操られている」
米民間調査会社ベネンソン・ストラテジー・グループが10月27~30日に実施した世論調査によれば、米国の有権者の44%が「連邦政府は秘密結社に操られている」と回答したという。内訳を見ると、共和党支持者の53%、民主党支持者の37%、無党派の41%がこのように考えている。
秘密結社は「陰謀論」の基本アイテムだ。
米国の代表的な陰謀論と言えばQアノンだが、参加者の間で秘密結社の存在は広く浸透している。彼らが敵視している秘密結社とは、米民主党の政治家やハリウッドスターなどで構成されている「ディープステート(影の政府)」のことだ。
米公共宗教研究所が今年2月に実施した世論調査によれば、米国の成人の16%がQアノンの陰謀論を信じており、これまで眉唾扱いされてきたディープステートの存在が今や政治の場でも公然と語られるようになっている。
「米国内に存在するディープステートがトランプ氏や愛国者から選挙を盗んでしまった。実行犯は処刑されなければなりません」
南部ノースカロライナ州の下院選共和党候補であるサンディ・スミス氏は、今回の選挙期間中にこうした主張を有権者に対して真剣に訴えかけていた。
陰謀論が米国民の間で広がりを見せていることを前述の世論調査は明らかにした形だが、なぜこのような現象が生じているのだろうか。
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