「日本人の7割は遺伝的に不安に陥りやすい」 特に注意すべきは「権力を持った高齢男性」…健康長寿を阻む孤独にどう立ち向かう?

ドクター新潮 ライフ

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「幸せな孤独」

 一般に「孤独」という言葉が使われる時、学術的にはふたつの意味が混在しています。英語の「ロンリネス」と「ソリチュード」です。前者はひとりでいることを寂しく思う孤独感を、後者は孤立、孤高を意味します。孤高や孤立というと、芸術家のような求道者をイメージされるかもしれないので、私はソリチュードを孤独だけれど寂しくない「幸せな孤独」と訳したいと思います。

 そして、「ロンリネス(孤独感)」は幸福度を低くするのに対し、「ソリチュード(幸せな孤独)」は幸福度を損わず、むしろプラスの効果をもたらすとの研究があります。つまり「孤独問題」の解消にあたっては、物理的に孤立しているか否かよりも、心理的にロンリネスであることの解決が優先されるのです。人気テレビ番組「孤独のグルメ」で、煩(わずら)わしい人間関係に振り回されることなく“ひとり飯”を堪能する主人公をロンリネスとは呼ばないでしょう。

孤独感で血圧が上昇

 また、孤独は健康長寿を阻害することも知っておくべきでしょう。

 例えば、孤独は冠動脈性の心疾患リスクを29%、心臓発作のリスクを32%増大させるとの研究報告があります。これは孤独感が血圧を上昇させ、炎症を起こすことによる結果だと考えられます。英国の研究では、孤独感が強いと2型糖尿病(遺伝的要素に加え、生活習慣によって発症する糖尿病)の発症が41%増えたと報告されています。加えて、孤独な人はそうでない人と比べ、認知機能が衰える速度が20%速く、認知症になる率も高いことが分かっています。

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