身長143センチのメッシにベットしたバルセロナのすごみ 代表で輝けない理由はクラブと代表の「サッカー観」の違い?(小林信也)
サッカーの言語が違う
「メッシが代表で輝けない原因はFCバルセロナとアルゼンチン代表のサッカー観の違いにある」
と指摘するのは的確なサッカー分析で信頼の厚いスポーツライター大塚一樹だ。
「周りにいる選手の考えがバルセロナとアルゼンチンでは全然違います。バルセロナのサッカーを身に付けて育ったメッシは、プレースタイルや意識が共有できないアルゼンチン代表では普段どおりのサッカーができないのでしょう」
アルゼンチンといえば、マラドーナに代表される天才的な選手の躍動がすぐ思い浮かぶ。緻密な組織プレーより、傑出した個の力でゴールを揺らすイメージだ。
「ボールを奪って素早いカウンターで攻める。球際の強さは抜群です。代表選手のほとんどが欧州でプレーする現在でも、『このラインに来たら潰しに行け』という意識が徹底されています。
これに対してバルセロナは、パスをつないで、自分たちでボールを動かして隙を作る、その先にゴールがあるというポゼッション・サッカーです。サッカーの言語が違うんです」
大塚は、育成年代の国際試合をバルセロナの戦術担当と一緒に見た経験がある。
「ピッチの幅はできるだけ広く取る。深さは広げて相手の守備を間延びさせ、自分たちが攻める時はラインを上げてコンパクトにする。危険なエリアの人数を増やすイメージ、これを徹底して幼いころから指導している印象でした。
日本サッカーの課題もそうですが、個人技でゴール前まで行ってもそこから先が決められない。その課題をバルセロナは組織的なサッカーで正しく教育し、選手もチームも育てているのです」
この話を聞けば、たとえメッシでも、文化の違うアルゼンチン代表で容易に輝けない理由が理解できる。果たして、5回目のW杯で、天才メッシはその壁をどう越えるだろう。
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