宮本隆治アナが振り返る「NHK紅白」 北島三郎さんと小林幸子さんの登場で起きたハプニングとは

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 NHK出身のフリーアナウンサー宮本隆治さん(72)は、「NHK紅白歌合戦」の総合司会を1995年から2000年まで6年連続で務め、2001年から2006年まではラジオ第1による紅白実況の演出を監督した。紅白を知り尽くした宮本氏だからこそ知る舞台裏や歌手たちの愛すべき素顔を聞いた。

宮本「紅白の総合司会の最も大きな使命は、最後の得点集計から放送終了までなんです」

 総合司会は歌合戦の最中も時間調整を行うなどの重責を担っているが、1番の腕の見せどころはエンディング部分なのだ。

宮本「得点集計から放送終了までは約2分半あります。ここで画竜点睛を欠いてはいけません。まず紅組と白組、どちらが勝ったのかを伝え、勝った側への優勝旗授与を進行させ、まだ時間があったら紅組と白組の司会者などのインタビューを行います。さらに全員で『蛍の光』を歌い、午後11時44分54秒でピタッと終わらせなくてはなりません。終了時刻から逆算し、進行させるんです」

 この間、スタッフからの指示はない。すべて総合司会が自己判断で進める。

宮本「だから紅白の総合司会は冷静でないといけませんが、冷静になりすぎてもいけない。観ている人から『アナウンサーだけが浮いている』と思われてしまいますから。そこは矯正しながらやるんです」

 紅白の本番は12月29日から始まるリハーサルの通りには進まない。

宮本「忙しい歌手の方々のスケジュールに合わせてリハーサルを行いますから。我々が『こんな流れなのか』と全体像を実感するのは本番なんです」

 紅白にはぶっつけ本番的な1面もあるわけだ。そのうえ計40組以上の歌手が出場するので、予測不能の出来事も起こる。

 1996年(第47回)の大トリ、北島三郎(86)が「風雪ながれ旅」を歌った時にもハプニングが起きた。北島はこの曲を1981年(第32回)も大トリでも歌っていた。

宮本「その時は雪をイメージした大量の紙吹雪を歌の最中に降らせたところ、北島さんの口と鼻に入ってしまいました。北島さんは紙吹雪を食べながら歌ったんです。だから1996年は『紙吹雪を降らせるのはマズイ』ということになり、歌い終えたところで紙吹雪を大型扇風機で散らせることになったんです。最後に紙吹雪がブワーッと出るようにしました」

 ところが予想外のことが起きる。

宮本「大型扇風機の風圧があまりに強すぎて、北島さんまで吹き飛ばされそうになってしまった。逆光になっていたので、視聴者の方は分からなかったでしょうが」

 ステージを終えた北島御大は担当ディレクターに向かって「おまえ、オレを殺す気か」と笑ったという。スタッフを責めないところが御大らしい。

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