宮本隆治アナが語る「NHK紅白」秘話 中村勘三郎さんが間違えまいと必死だった西城秀樹さんの曲名
勘三郎さんも緊張
およそ緊張など無縁の人に思えた故・5代目中村勘九郎さん(18代目中村勘三郎)も同じ。1999年(第50回)で白組司会を務めた時のことである。故・西城秀樹さんの曲名のことで考え込んでいた。
宮本「西城さんは『バイラモス』という歌をうたうことになっていたのですが、勘九郎さんが『宮本ちゃん、どうしよう』と寄ってきました。『バイラモス』を『バイアグラ』と間違えてしまうことが心配だと言うんです。決して笑い話ではありません。過去にも同じような例がありましたから」
1986年(第37回)、白組キャプテンだった加山雄三(85)が、少年隊の「仮面舞踏会」を「仮面ライダー」と紹介した件だ。
宮本「加山さんには罪がなかったんです。当時のスタッフが事前に加山さんの緊張を和らげようと、こう言ってしまったんです。『加山さん、<仮面舞踏会>ですよ。<仮面ライダー>じゃありませんからね』。それが裏目に出て、逆に擦り込まれてしまった」
宮本氏は勘九郎さんにこうアドバイスした。
宮本「『バイラモス』をスーッと一気に言おうと思うから、『バイアグラ』と間違えやすいんじゃないですか。『バイ』で一旦区切りましょう。その間に『ラモス』か『アグラ』かを考えたらどうですか」
すると勘九郎さんは「宮本ちゃん、それいいね!」と笑顔になった。
宮本「もちろん本番では間違えませんでした。『バイラモス』と言い終え、ステージの袖に戻って来た勘九郎さんは『宮本ちゃん、良かったぁ』と抱きついてきました」
その後、勘九郎さんから宮本氏に直筆の丁寧な礼状が届く。
宮本「『ありがとう』などと書かれた心のこもったものでした。ささいなことだったのに。勘九郎さんが誰にでも愛される理由がよく分かりました」
みんなが緊張する紅白。宮本氏は神社へ行くなど願掛けをしたのだろうか。
宮本「一切しません。山川静夫さんから『紅白の司会をやるからといって、自分のルーチンを変えてはいけない』と助言を受けていたからです」
山川氏の場合、ルーチンを変え、タキシードと靴を新調した。すると、靴のサイズが合わなかった。それに気を取られていたら、今度はステージにマイクを持っていくことを忘れてしまった。
宮本「だから本番には普段着ている洋服、普段履いている靴で臨みました。本番前の生活もいつも通り。さすがに12月中旬以降は夜遅くなりそうな会食はお断りしましたけれど」
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