梨泰院雑踏事故で「尹政権は退陣せよ」と怒る韓国人に違和感 3つの原因を専門家が指摘

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「BBC NEWS JAPAN」は11月6日、「梨泰院の雑踏事故から1週間、ソウルで数万人が追悼・抗議集会 犠牲者への正義求め」の記事を配信し、YAHOO!ニュースのトピックス欄にも転載された。だが、この記事が伝えた《政治的抗議行動》の様子に、日本のSNSでは違和感を表明する意見が相次いで投稿されている。(一部敬称略)

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 改めて痛ましい事故について振り返れば、発生は10月29日の夜だった。11月10日現在、156人の死亡が確認されている。死因は圧死が目立つといい、朝日新聞は《犠牲者のうち女性が男性の2倍近くにのぼった》と報じた(註)。

 ではBBCの記事から、事故の発生で尹錫悦[ユン・ソンニョル]大統領(61)に対する批判が高まっているという部分を引用しよう。

《ソウル市庁舎の近くで行われたこのデモでは主要道路の2車線が封鎖され、数万人が集まった。参加者の多くは尹政権の「退陣こそが追悼だ」という尹氏に向けた辛辣なメッセージが書かれた黒いプラカードを手にしていた》

 抗議に集まった人々は、「尹錫悦政権は退陣せよ!」と何度も声をあげたという。こうした動きに、少なからぬ日本人が違和感を覚えているようなのだ。

 梨泰院の事故では、警察の不手際も次々に明らかになっている。BBCも《事故から1週間後、当局は警察署や消防署を家宅捜索するなど、調査を開始した》と報じた。担当記者が言う。

「事故が起きた際、梨泰院における警備体制が手薄だったことは、日本でも大きく報道されています。警察や消防の責任が問われていることには、多くの日本人が納得しています。一方、抗議の声に政権批判が含まれていることについては、SNSなどで疑問視する投稿が後を絶ちません」

政権批判の起きない日本

 Twitterから「警察批判は当然だが、政権批判は理解できない」という主旨の投稿を引用させていただこう。

《自治体や警察当局への批判や責任を追及するのならともかく、何で政権批判どころか政権の退陣を要求してるんや?》

《行政らに処分のデモはとてもよくわかるのだが、大統領政権は退陣せよ!等一部叫んでる人見ると、趣旨から逸れてて理解に苦しむ》

《なんでそうなるかなぁ…今デモとか政権交代とか言い出すと今後事故を起こさないためにする行動が後手後手になるやん…》

 2001年7月に兵庫県明石市で発生した明石花火大会歩道橋事故では、圧死などで11人が亡くなり、183人がケガを負った。

 この事故でも兵庫県警の警備計画や対応に問題があったことが発覚し、刑事裁判では警備担当の明石署の警察官に実刑判決が下っている。

 だが、政治の責任を問う声は皆無だったと言っていい。ちなみに、当時の首相は小泉純一郎氏だった。遺族や被害者、兵庫県民が一丸となって「小泉退陣」を求めるデモを起こす──そんな動きは全くなかった。

「『大惨事の発生で政権批判が高まる』という現象が韓国で起きたのは、これが初めてではありません。2014年4月、セウォル号沈没事故が発生し、乗員乗客299人が亡くなりました。すると当時の朴槿恵[パク・クネ]大統領(70)にも批判が集中しました」(同・記者)

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