プロレスデビューしたフワちゃん 共演者からイジリの標的にならないワケ

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キャラに奥行き

 フワちゃんが長く生き残っている理由は、生来のセルフプロデュース能力の高さによるものだろう。彼女はお笑いコンビの一員として活動を始めて、解散してピン芸人になった後、YouTubeの世界で注目され始めた。もともとInstagramで自ら加工した「おもしろバカ画像」をアップし続けていた彼女は、映像制作にも同じような楽しみを見出した。

 明るさ、勢い、行動力、ビジュアルセンスなど、彼女が持っている強みがYouTubeの世界ではそのまま生かされた。しかも、彼女には暴走する自分を客観的に眺めるプロデューサーとしての冷静な視点も備わっていた。

 テレビの世界ではその能力が生かされた。視聴者や共演者は「フワちゃん」という人間をどういうふうに見ているのか。それを踏まえて、どういうふうに行動すれば彼らを楽しませて、彼らと良い関係を築くことができるのか。彼女はそのことを誰よりも冷静に考えて、戦略を練って、それを実践してきた。

 そして、フワちゃんはそんな戦略的な一面をコソコソ隠そうとはしない。むしろ、積極的にさらけ出すことで、それも含めて面白がられているようなところがある。

 フワちゃんのようなタレントは、ある段階で「この子、カメラの前ではタメ口だけど、裏ではものすごく真面目なんですよ」などと、共演者からイジられたりすることがある。でも、フワちゃんのキャラクターにはその単純な「表の顔・裏の顔」という図式にとどまらない奥行きがあるので、そういうイジリの標的になることもない。

 ゴールデン・プライムタイムの番組では体を張って派手に暴れ回ったり、スポーツに挑戦したりする。一方、深夜番組やラジオでは、明るく振る舞いながらも戦略的な一面を覗かせたり、親しい芸能人と距離を詰めてじっくり話をしたりする。フワちゃんのことを熱心に追いかけているファンにとっては、その振れ幅の大きさも魅力である。

 プロレス挑戦によって、まだまだ秘めた才能があることを見せつけたフワちゃん。これからも息の長い活躍を続けていくだろう。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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